今年は、年末年始の書籍売上が前年を突破!というちょっと明るいニュースからスタートしました。この勢いで本がガンガン読まれる一年になる事を祈っています。さて、そんな中、昨年のピケティブームを思い出しました。本体価格5,500円という異例のベストセラーは年末年始の長い休みの重厚な読書にぴったりだと言われていました。あのピケティ読者たちはこの年末年始は何を読んでいたのでしょう?
2014年12月20日~2015年1月4日に『21世紀の資本』を購入した方の動向を分析してみました。まずは年齢層から。
2015年の年明け以降、ピケティブームはさらに盛り上がっていきますが、この期間の購入者は、まだ経済・政治へ興味の深い層が中心だったのでしょう。そのためピークは60代男性と一般的なビジネス書よりもちょっと高めになっています。
続いて、この購入者がこの年末年始期間(2015年12月20日~2016年1月4日)の期間で購入した商品を見てみます。そのTOP5がこちら
RANK | 書名 | 著者名 | 出版社 |
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1 | 『ギリシア人の物語[1]』 | 塩野 七生 | 新潮社 |
2 | 『蘇我氏の古代』 | 吉村 武彦 | 岩波書店 |
2 | 『戦略がすべて』 | 瀧本 哲史 | 新潮社 |
2 | 『新・韓国現代史』 | 文 京洙 | 岩波書店 |
5 | 『脊梁山脈』 | 乙川 優三郎 | 新潮社 |
5 | 『「領土」の世界史』 | 八幡 和郎 | 祥伝社 |
塩野七生の新シリーズがダントツの1位を獲得。年末年始になくてはならない本が今年の書店店頭を飾りました。シリーズはまだまだ始まったばかり、今後の動きが楽しみです。
その他にも、政治・歴史関連の著作がずらっと並んでいます。元々高額本を購入した方の併読本なので、並んだ本の定価も高めなのが面白いところ。定価に左右されず、得たい知識を得る方々なのでしょう。
それでは、併読本の中からいくつか注目本を紹介します。
内田樹×福島みずほという一見意外な組み合わせが語り合ったら1つのキーワードが見えてきました。それが「意地悪」。世の風潮に何かひっかかりを覚えている…という人はこの本を読んで今起きていることを整理してみるのも良さそうです。その中から今年やるべき事が見えてくるかも。
前年、『21世紀の資本』読者の併読率の高かった本の中に『その女アレックス』が入っていました。このことからすると必然の理なのかもしれませんが、今年の併読本にも同著者の新作が入っています。物語は、アレックス事件前のカミーユ刑事の活躍を描いています。
併読本の中にはちらほら時代小説作家の著作が見られました。時代小説というと、佐伯泰英をはじめとした書き下ろし時代小説のブームが続いていますが、この読者の併読本として並ぶのは葉室麟、乙川優三郎といった直木賞受賞作家の著作です。と、書いておきながらなんですが…『脊梁山脈』は著者初めての戦後を舞台にした現代物長編。骨太な男たち、凜とした女性たちの生き方は時代を問わず現代のビジネスマンの心を揺さぶります
そもそも秘史とは表に出ていない秘められた歴史ということだそうですが、正史の役割を持つ『戦史』の裏面にあたる書物がこの『秘史』なのだそうです。皇帝や将軍本人や后の悪行を暴露したビザンツの陰の歴史。そもそも虚実ないまぜの内容で、扱いには注意が必要と内容紹介にも書いてあるあたり興味が尽きません。読み物としてチャレンジしてみては?
江戸時代の主役は侍でも商人でもなく百姓だったと言われています。百姓と聞くと年貢に苦しみ、つぎはぎだらけの服を着たイメージばかりを持っていましたが、実は豊かで逞しく生きていたようです。この本では、村・地域社会に焦点をあて役割や慣例を解説。今年はより地方、地域の活性が叫ばれる年になるでしょう。温故知新の意味も含め手にとってみたい1冊です。
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2015年の総合ベストセラーには残念ながら入ってきませんでしたが、『21世紀の資本』は紛れもなくこの年を代表する1冊でした。記録より記憶に残る(長嶋か…)本が1冊も多く出版され、多くの人の足が書店に向かう1年になるといいですね。