読書は冒険!-ひこ・田中
きみも本当は本好きかもしれない。-金原瑞人
監修人ふたりが強く宣言する。
本を読む人が減っている、と巷間言われている。でもみんな、いつもスマホをのぞいてはメールやSNSで文字を読んでいるじゃないか。もしかしたら50年前より現代の方が文字に馴染んでいる時代になのかもしれない。
いちばん本が読めるのは10代。多分、異論はないと思う。この時代に手当たり次第の乱読をしておくと、一生、本を楽しめる。「でも、本って数が多すぎる」って困ってしまうのは本を読むことを仕事にしているワタシだって同じこと。
だったらいろんな種類の本好きが、いろんな本をお薦めしちゃおうというのがこの本だ。27人の選者には、児童文学の研究者、書店の児童書担当者、青春小説をたくさん書いている作家、図書館司書、海外のYA小説の翻訳家、歌人、書評家など「この本、ぜったいに面白いのよ」と勧めたがりが集まった。その中のひとりに私も入れてもらった。もちろんノンフィクション担当。
難しい本は1冊もないし、ほとんどがここ5年以内に出版された本ばかり。様々な国でいま若者に好まれている、という作品もたくさん紹介されている。実は私も翻訳小説は知らない本だらけで、すでに何冊か買ってしまった。
ただ漠然と紹介しているのではない。監修者のふたり、児童文学作家のひこ・田中さんと人気翻訳家、金原瑞人さんが「こんなときに読んだらいいよ」と5章17のシチュエーションに分け、小さな悩みも壮大な疑問も、不安も恋愛も友情も将来も、どれかがきっと役に立つように構成した。
選者のお薦めコメントもぐっとくる。
書評家の豊崎由美さんは推薦したラジスラフ・フクス『火葬人』について「一番怖いのは幽霊や怪物なんかじゃなく、人間」と書き始める。ナチスドイツの影が迫る1930年代にプラハの葬儀場に勤めるちょっと変な男の話、と聞けばそそられないか?
『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞を受賞した森絵都さんは、高校卒業をひかえた7人の少女の短編集、朝井リョウ『少女は卒業しない』を「今日からもっと丁寧に毎日を生きよう、という気分になる本」と勧めている。
私が推薦したのは『新13歳のハローワーク』『巨大な夢をかなえる方法』『この世でいちばん大事な 「カネ」の話』『跳びはねる思考』『風をつかまえた少年』の5冊。
最初はパラパラとめくっているだけでいい。タイトルやコピーにちょっと魅かれたら紹介文を読んでみて、気に入ったら図書館へ。一度、本が面白いと思ったらラッキーだ。現在、MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店で本書に紹介されている本のフェアを開催中。なかなか壮観なので、お近くの方は是非足を運んでほしい。
本書に関連した金原瑞人さんと三辺律子さん(英米文学翻訳家)のトークショウ「子どもも大人も!YA(ヤングアダルト)読書案内」が12月19日に「OLD/NEW SELECT BOOKSHOP 百年」で企画されている。詳しくはこちら