今年も『ノンフィクションはこれを読め!』が発売されました。そこで、発売を記念して昨年版の読者の購買層と購入商品を分析してみることにします。
下記が購買層クラスタです。サンプル数が少なめながら、40代・50代の男性を中心に読まれていることがわかります。これまで紹介させていただいた書籍から、もう少し上の世代に読まれている印象を持っていましたのでこの結果は意外でした。そして80%が男性読者となっていました。
では「これを読め!」と言われた読者たちはこの1年、どんな本を読んできたのでしょうか。
『ノンフィクションはこれを読め!2013』読者が昨年10月以降購入した本トップ10が
こちら!
RANK | 銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 |
1 | 『世界と闘う「読書術」』 | 佐高信 | 集英社 |
1 | 『人に強くなる極意』 | 佐藤優 | 青春出版 |
3 | 『喰らう読書術』 | 荒俣宏 | ワニブックス |
4 | 『知の武装』 | 手嶋龍一 | 新潮社 |
4 | 『日本人へ』 | 塩野七生 | 文藝春秋 |
4 | 『歴史をつかむ技法』 | 山本博文 | 新潮社 |
7 | 『嫌われる勇気』 | 岸見一郎 | ダイヤモンド社 |
8 | 『読書脳』 | 立花隆 | 文藝春秋 |
8 | 『だから日本はズレている』 | 古市憲寿 | 新潮社 |
8 | 『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』 | ヘンリ−・スコット | 祥伝社 |
一目瞭然、読書術や「本を読む事」について書かれた本が並びます。読書そのものを愉しむだけでなく“その本について、誰がどんなことを言っているか”“この人の本棚はどうなっているのか”“思考方法”といった事を楽しんでいらっしゃるようです。しかし、こういった本を複数購入されている方が多く、それはそれでとても有難い一方「テクニックもいいですが、たまにはお薦めされている本そのものに飛び込んでみては…」といらぬお節介を焼きたくなっています。
出版業界では、年末に向けてミステリ、時代小説、文庫などなど年度のベスト本を決めて紹介する類の本の出版が相次ぎます。ベストセラーランキングに入るようなベスト本も多い中、このノンフィクション読みたちがそちらにほとんど手を出していないのも興味深い姿でした。
今年の『ノンフィクションはこれを読め!』のベスト1については、実際に本を手に取って確認いただくとして、上記の読者が最近読んでいる本の中から注目タイトルを何点かご紹介させていただきます。
RANK | 銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 |
1 | 『本の「使い方」』 | 出口治明 | KADOKAWA |
2 | 『ベスト珍書』 | ハマザキカク | 中央公論新社 |
3 | 『〈問い〉の読書術』 | 大澤真幸 | 朝日新聞出版 |
4 | 『なぜ時代劇は滅びるのか』 | 春日太一 | 新潮社 |
4 | 『建築探偵術入門』 | 東京建築探偵団 | 文藝春秋 |
4 | 『常識の立場』 | 文藝春秋 | 文藝春秋 |
4 | 『ホット・ゾーン』 | リチャード・プレストン | 飛鳥新社 |
HONZでも話題になった書籍が多くランクインしてきています。特に『ホット・ゾーン』は売上がぐんぐん上昇中。本は売れてくれても、患者数は早期に激減…となって欲しいところです。
ほぼ30年ぶりに復刊された幻の名著。建築の本ですが、街歩きガイドとして手に取る方も多いようです。読者に小説好きが多いのですが、それはもしかしたら「探偵」の言葉に惹かれたからなのかもしれません。今はなき懐かしいビルも多数収録されているそうなので、建築好きは必携!
歴史を紐解いてみると、国家を二分するような議論が何度も起こっています。日米安保の是非、靖国問題、マルクス主義についての賛否…と時代によってそれは様々ですが、世の流れに流されず自説を貫き通した方たちも必ず存在しているのです。「文藝春秋」誌上で展開された論考の傑作選。
著者は灘校を東大合格者数ナンバーワンに導いた『銀の匙』の授業で有名な橋本武さん。その授業のエッセンスがぎゅっと凝縮された古文入門書です。徒然草そのものは、随筆ですが、吉田兼好が抱く現世への無常観など哲学書として読むことも出来そうです。その証拠に本書の読者は非常に多様性のある読書をしている方が多く、科学、数学、文学、芸術とラインナップを見ているだけでこちらが楽しくなってくるような併読本リストを形成していました。ゆったりと思考にふけりたい時にお薦め。
古幡 瑞穂 日販マーケティング本部勤務。これまで、ながらくMDの仕事に携わっており、各種マーケットデータを利用した販売戦略の立案や売場作り提案を行ってきた。本を読むのと、「本が売れている」という話を聞くのが同じくらい好き。本屋大賞の立ち上げにも関わり、現在は本屋大賞実行委員会理事。