OL、モデル、アスリートにイラストレーター…
本書に登場する11人の女性には、一つの共通点がある。
それは、全員が義肢装具士・臼井二美男さんによって手がけられた義足を身につけているということである。一人ひとりの思いを実現するため、何度も対話を重ねながら生み出された「夢見る義足」。足の切断というアクシデントに見舞われた女性たちが、今、新たな一歩を踏み出した。
人間の根源的な欲求は、須らく「足」というパーツへ向かうのだろうか。もっと高いところへ、もっと遠くへ。その欲求はアフリカにいた人類の祖先を世界へと誘ったし、もっと美しく見られたいという欲求は、様々なファッションを生み出してもきた。
それらの思いを彼女たちの「表現」として描き出すのは、気鋭の写真家・越智貴雄さん。約1年前に開催された写真展でも大きな反響を呼んだ、まさに目を奪われる写真の数々。そのいくつかをご紹介したい。
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もっと高いところへ。その思いを叶えるために、人間は大地の上に建築という人工物を作ってきた。タワーやビルディングとの対比で映し出された義足という存在。彼女たちのピンと伸びた背筋は、力強さを物語る。
「夢だね。最後は夢。義足をつけてこれをしたいという意志が大事。おもいきり走りたいのか、スキーをしたいのかで、義足も変わるから。」とは臼井さんの言葉。
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もっと遠くへ。人間の強い思いは、数々の器具を生み出してきた。靴、自転車、バイク、車。彼女たちの願いもまた、それらのツールとシームレスに接続され、身体は拡張する。
障害者を「かわいそうな人」「がんばっている人」という勝手な先入観で見てしまう壁。「いつの間にか立てたその壁を、カメラの目が壊してくれた」と、越智さんは語る。
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もっと美しく。時には見せたり、隠したり。義足は隠さなければならない存在から、隠して魅せるものへと進化した。その機能美には、情緒が宿る。
撮影にあたっては、被写体自らが衣装を選び、中にはスタイリストやヘアデザイナーを連れてきた人もいたのだという。
じろじろ見てはいけないという「申し訳のなさ」や、目を背けてはならぬという「正義感」ではない。そこから強烈なメッセージが発せられているから、自ずと義足に視線が向かう。
支える人、表現する人、撮影する人。三者の緊張感が「ありのまま」という表現を作り出した。11通りの人生を歩む女性たちによる、全68点の写真集。私たちの「まなざし」もまた、表現の一部である。
<画像提供 写真家・越智貴雄>