書評の冒頭からいきなり本書『シェール革命』の結句を引用する暴挙をお許しいただきたい。金融機関での勤務経験もあるジャーナリスト財部誠一はこう結んだのだ。
「石油と軍事、その背景にあった金融資本主義を後退させ、シェール革命が新たな産業基盤を創出する『資本主義』の創造につながることが期待される」と。
それでは、なぜ金融資本主義は後退するのか。新たな産業基盤とはなにか。地下にシェールガスを持たない日本は、新たな産業基盤の創造から取り残されてしまうのか。そもそもシェールガスとなにか。どのように生産されるのか。そして、原子力発電などに影響はあるのか。
本書はそのすべての疑問に対し、豊富な図版を使いながら、優れたビジネス・プレゼンテーションのごとく分かりやすくスピーディーに回答を与えるのだ。エネルギーや鉄鋼、産業機械や化学工業に携わるビジネスマンはもちろん、個人投資家や就職先を考えている学生なども知っておくべき情報が満載だ。
1980年代にはじまった情報革命は現在も進行中である。いまも人々の暮らしや経済構造に驚くべき変化が起こりつつある。いっぽう、エネルギーや重厚長大分野は変化を支えるための、動かざる基盤という位置づけだった。
ところがアメリカで数年前から進行しているシェール革命は風景を一変させうるかもしれない。アメリカ国内では天然ガスの価格がたった3年で3分の1になったのである。
中東やロシアなどの天然ガス輸出国は生き残るのか。中国はシェールガスを生産できるのか。世界中の製造業は安いエネルギーをもとめてアメリカに移動するのか。そして、日本はその恩恵を受けることができるのであろうか。
地球の浮沈をも賭けた変化と闘いがいま始まった。
(産経新聞 3月1日号 書評欄掲載)