一年を振り返り、例年よりも多岐にわたるジャンルに目を向けられたように思います。HONZでレビューを見て読んでみたくなったり、気になっていた方とお会い出来たり、さらに新しいイベントをご紹介していただき本とも繋がれました。一生懸命伝えようとされている人に胸を打たれ刺激された日々だったと思います。今回のテーマベスト5を順位をつけずに記載していきたいと思います。
専業主婦だったときに”家事はやって当たり前。どれだけ綺麗にしても、どれだけ丁寧に食事を作っても当たり前”それまで仕事をすることで見出してきたやりがいが急に見えなくなっており、『他の人が普通に出来ることを、何故出来ないのだろう』と考え続けていました。例えば、仕事場で汚い部分を掃除すれば何かしらのレスポンスがあると思うのです。
しかし、家の中に限っては、不思議と当然の感覚になるのが疑問でした。誰でも当たり前にしていることを、私は疑問に感じ、悩んでいたのです。『家事労働ハラスメント』。この本は、女性も男性も読んでみて欲しい一冊です。まず、固執した考えはいけないということを教えてもらえました。さらに、日本という国全体が疑問を持って然るべき問題であることを教えてもらえました。今後、さらなる高齢化社会へと移り変わっていく中で悪循環を少しずつ立ち退かなければ、基盤が揺らいでしまうのではないかと不安を感じました。他人事と思わないで考えていかなければと意識を改めさせられました。もう少し関連する本も読んでみようと思いました。
食事に迷ったときは、この一品。実用書の『コンビーフレシピ』。本当におすすめです。コンビーフだけでも良いのですが、味が濃いのでやはりレシピを見て簡単にアレンジした方が私は好きです。文芸社さんに感謝したいくらいに、出会えて嬉しかった本です。「あと一品何かないかな?」と思うと、この本が思いつくくらいに、コンビーフファンになりました!
コミックでは、前回もご紹介した『さよならタマちゃん』。書店員の目線からみるとコミックよりも実用書・医学書付近に展開した方がきっと見て下さる人は多いように思います。レビューを書いた後、コミック販売部の方とお会いする機会をいただけました。「自分の中で荒れ狂う感情を一旦落ち着かせてから描いている」という認識が共通していたので、とても嬉しく感じました。『傍で支えてくれるのは、家族です。しかし、共感・理解してくれるのは同病の方なのだと教わった』と以前書いたように思いますが、今もこれからもずっと感じ続けると思います。伝えていきたい一冊です。
少し古い出版になるのですが、揺さぶられた一冊。『ほんのすこしの勇気から』。HONZを通じて知り合えた方にお誘いいただき、本の交換会で出会いました。難民問題について、解りやすい挿絵と言葉で綴られていて強い思いを感じます。世界のあちこちで未だ戦争は行われていて、終結はいつになるのか分かりません。人の数程考え方があり、一人一人が大切にしている思いが強いということ自体は悪いことではないのに、どうして諍いが起こってしまうのでしょう。子どもは言葉や偏見を超えてすぐに仲良くなれるのに、どうして大人になると傷つけあうようになるのでしょう。この本のように、歌を「ラララ」で歌うことで手を取り合っていけたらいいのに。そんな風に思いました。世界のこと、自分の国のことに目を向けて考える切っ掛けをくれた本です。大事な本になりました。
最初の頃から応援している作家さんが脚光を浴びてきていることはとても幸せなことです。ご紹介させてください。『ヒーローインタビュー』。つい人と比べてしまう自分に、「人によって役割が違うのだから、自分に合った良いところ素敵なところを探していこう」と気づかせてくれました。もしかしたら、私が書いた文章で励まされたり勇気を出してくれたり笑顔になったりするかもしれない。だから、素直に書いていこうと思えたのです。色んな場面で、『ヒーローインタビュー』の登場人物たちが発する言葉は私を励ましてくれました。本当に救われた小説です。
本屋大賞一次投票のための読み込みも、後、一週間程になりました。迷っている作品があるのでじっくり考えたいと思います。毎月一回文章を書いていますが、出会えなかったであろう人や本と繋がる切っ掛けをくれたHONZという居場所、ご覧になられている皆さまに感謝したいと思います。来年も、どうぞ、よろしくお願いいたします。
本は、人の心に寄り添ってくれます。時に手を繋ぎ、時に叱咤してくれます。私たち書店員は、少しでも本を人の元へ届けたいと、繋がって欲しいと願っています。時間がぽっかり空いたとき、ふと思い立ったとき、ご覧になられるだけでも良いです。お近くの書店にふらりと足を踏み入れてください。
ゆっくりお話は出来ないかもしれない。慌ただしいかもしれない。それでも、私たち書店員は、心から「来てくださってありがとうございます。ゆっくりしていってください。」と思い続けています。人の魂の輝きがお店一杯になるように、願いを込めて新年を迎えたいと思います。読んで下さった皆様。本当にありがとうございました。HONZの皆さま、ありがとうございます。よいお年を!
髙橋佐和子
1982年、AB型。埼玉県にて育つ。大手書店、街の書店を経て、現書店で働く。地図ガイド・児童書・文庫のお手伝いをしているが、文芸をこよなく愛するアルバイト。最終目標は全ジャンルに対応できるようになること。本と同じくらい愛しているのは吐息が出るほどの美味しい日本酒。
【山下書店南行徳店】
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