本屋の楽しさをアプリで再現[Antenna]
本屋には、本を買うこと以外にも大切な楽しさがあると思います。思わぬ新刊との出会い、自分の興味外分野での発見、暇つぶしなど… HONZをご利用の方にも、このような楽しさを本屋で実感している方も多いのではないでしょうか。
かくいう私も月に何度も本屋に訪れ、1〜2時間ほどうろうろして30〜40冊ほどチェックし、多い時で10冊ほど購入します。そのとき最も気持ちがいい瞬間は、先に挙げた“興味外分野での発見”をした時。
[Antenna]は、この体験をアプリでも再現できないか?という発想から2012年5月に生まれました。日本国内の様々なジャンルの厳選されたウェブメディアだけを190集めて一気にまとめて配信しています。記事数は多い日で1日800を越えることもあり、まさに本屋を歩き回っているかのように日本のトレンドを一気にチェックできるのです。ユーザー数は2013年に入ってから急激に伸びはじめ、現在160万人です。
起業するまでのエピソード
なぜ、本屋での体験をサービス化しようと思ったかというと、厳選されたメディアの記事のみを集めれば、昨今(特にネット上での)情報過多が叫ばれるようになった事に対しての解決策になるし、本を買わなくなった世代に対しても同様の体験をしてもらいたいと考えたからです。ちょうどキュレーション(=情報を収集しまとめて、新しい価値を持たせて共有すること)ビジネスが世界的に急激に伸びていたことも後押しになりました。ちなみに、HONZも本のキュレーションサービスと言えますね。
「ライフスタイル、ファッション、グルメ、旅行など、各分野の良質な記事だけがアプリ内に流れてくる状態を作れば、検索エンジンやウェブサイトを毎回経由しなくても簡単に、かつ楽しく情報収集できるし、必ずユーザーからも評価されるはずだ。」そう信じて起業の準備がはじまりました。
1週間で企画書を作って、外部の方からまず頂いた意見は、「このモデルは絶対にうまくいかない」というものでした。「メディアにとって記事は重要な資産。その記事を無償で提供するはずはないから、記事を集めることに膨大なコストがかかってしまう」「集められたとしてもそのサービス自体が自社メディアと競合になるわけだから絶対に成立しないモデルだ」と断言する人もいました。だが、否定されると逆に燃えるタイプなので、アイデアを信じてサービス立ち上げを推進することにしました。
いろんなメディアを回っているなかで、ウェブメディアの記事には必ずキレイな画像があることに着目し、ジャンルもおしゃれなライフスタイル系のものに絞って、雑誌を読んでいるような体験ができるものを出発点としました。当時のアプリでは画像のサムネール+タイトルが並んだ記事一覧が一般的でしたが、写真が必ずあるのであればスマートフォンの特性を生かして画像を画面一杯に表示し、つなげて表示してしまえということで現在のUIになりました。(実は、一度はサムネール+タイトルで作ってみたのですが、完成してみたらつまらなかったので作り直しました)
メディアの募集も1社1社訪問して熱く語ってみると、意外とほとんどのメディア会社が好意的でした。「勝手に記事を流用するサービスが多いなかで、わざわざ訪問してくれた」「サービスのコンセプトに共感する!」という声を逆に頂いて、60社近くを1ヶ月で回り気が付けば立ち上げ直前の4月に47の有力メディア様が無償での記事提供を承諾してくださいました。
これはイケる。参加を表明していただいたメディア様と一緒にサービスを大きくしていけば、いい記事が集まるし、ユーザーもついてきてくれるはずだ。そういう実感を持って5月に予定通りサービスインすることになりました。
しかし、そう簡単ではありませんでした。ユーザー数は予想以上に伸びず、対応デバイスを増やしてもいまいち加速がつきません。社員全員で原因を考え抜いたあげく、やはり原理原則に基づいて、ユーザーの満足度が上がる小さな改善を着実に積み重ねていくことからはじめてみました。3ヶ月で約50カ所近い改善を行った結果、徐々にユーザーが増えはじめ、その後iPad版をリリースした直後から一気に加速度が付くようになりました。その頃から、Apple社のiTunesの特別欄で紹介されたり、Google Playの特選アプリに選定されたり。起業直後は、「20万ユーザーっていつ達成できるのかな…」と思っていましたが、今では月20万のペースで増えるまでになりました。
今後目指していくこと
ユーザーからいただいているレビューにとても嬉しいものがありました。
「普段見ない情報も自然と入ってくるので、自分の興味の幅も広がります!」
まさに創業時に狙っていた楽しさをユーザーの方も実感していただいていることが本当に嬉しくて、サービス拡大の(ほんとに小さい)ハードルを乗り越えた気がしました。
持論ですが、人の興味の幅は本当はもっとストレッチできるはずなのに、日頃の忙しさから自分でキャップをしていて、[Antenna]はそのキャップを外せるサービスでありたいと思っています。次のバージョンでは、[Antenna]内で流れている記事の商品をその場で買えるようにし、ウィンドウショッピングで思わぬいいモノを発見して衝動買いしてしまうような体験を提供していきたいと考えています。まだ使ったことが無いという方は、ぜひダウンロードを!
使いやすさ、コンテンツの見やすさを大幅に改善して本日(12月21日)リニューアル!
株式会社グライダーアソシエイツ 代表取締役 町野 健
*「編集者の自腹ワンコイン広告」は各版元の編集者が自腹で500円を払って、自分が担当した本を紹介する「広告」コーナーです。HONZメールマガジンにて先行配信しています。