「2013年のベスト本の紹介を…」とご依頼いただき、改めて一年読んだ本を振り返って思うのは、悩みに寄り添い、励ますような本に惹かれる1年でした。思い入れが深い本ばかりで説明文が長くなってしまった為、前置きは省略し早速ご紹介していこうと思います。
1位
「哲学者の先生、教えてください!」とあるように、誰しも一度は疑問に思うような人間の根源的な問いに対して、哲学者の先生が二人がかりで答えてくれるという本です。答えの出ない事を、考えても無駄!とスパッと切り捨てる事が前に進むために必要な事もあるかもしれませんが、時にはじっくり腰を据えて考えることで、得られる事も多いのではないでしょうか。
「本当に頭のいい人とは容易な言葉で難しい事を説明できる人だ」と言いますが、日本の哲学界に燦然と輝く著名な先生たちの答えは、小学校高学年くらいから読めるような文章であるのにも関わらず味わい深いものが多く、そこらかしこで感動して好きなフレーズは何度も読み返しています。
一番唸ったのは「どうすればほかの人とわかりあえるんだろう?」という問いに対する戸田山和久先生の答え。なんと「こんな問題を考えてはいけない」「くだらない問いなんだよ」とビシリ。「わかりあえない相手とわかりあえないままでどうやって共存していこうか。こっちの問題の方こそ考える価値があると思うよ。」と結論を出されるわけですが、そこに至るまで、相手を尊重するとはどういう事か、人間ってそんなに単純ではないのだよ、と例を出しながら解説されるのですが、常に弱い立場に立たされている人への温かいまなざしがあって、その優しさに感動しました。
他にも「死んだらどうなるの?」「勉強しなくちゃいけないの?」「なぜ生きているんだろう?」などの問いに、魅惑的な答えが用意されています。きっと心に響く言葉が見つかるはずです。
2位
「やってしまったことの後悔は日々小さくなるが、やらなかったことの後悔は日々大きくなる」
よく取り上げられる林真理子さんの名言です。良かれと思った事にせよ、失敗にせよ、何かをやったことの反応が芳しくないと、悩んでしまうタチです。やった後に、配慮が足りなかったとか、相手の忙しい時に負担をかけてしまったのではないかとか。そもそも、関わらなければ、何もアクションを起こさなければこんなにも悩んだりしないのに。何事にも無関心であれば平穏な生活が送れたのではないかとさえ思います。
しかし一喜一憂という言葉がある様に、喜ぶための手っ取り早い打手の一つがアクションを起こすことだと思います。大切なのは投げたボールに執着しないこと。受け取りやすいボールの投げ方は修練で体得できますが、あくまで受けるか受けないかの最終判断は相手次第。ボールを受け取る人がいるのか、投げ返して貰えるかは投げる側のコントロールの及ぶ範囲外です。ぶつかって怪我をする人がいたら申し訳ないけど、その時は誠意を尽くして謝る。はたまたスルーされて川に落ちたボールでも、プカプカ流れて、下流で誰かに拾われて、いつか手元に帰ってくるかもしれない。そう考えるとなんだか楽しくなってきませんか?
下手な球しか投げられなかったら帰って反省して練習すればいい。どれだけ現役で投げ続けることができるのか。野球にはぜんぜん詳しくない私が例えに野球を使っているので、ちょっと説得力にかけるかもしれませんが、ただ傍観しているより、リスクを負っても投げる人生の方が楽しいですよね。失敗が怖くなった時、アクションを起こすのがちょっと面倒だなと思った時、思い出して頑張ろう!と自分を奮い立たせるきっかけになってくれた一冊です。
3位
広く浅い交友関係を維持するよりも、太く短くとも濃くて熱い仲間を探せ!そしてチームで絶大な成果をあげよ!と書かれた本書は、天才でなくても成功できる可能性を感じさせてくれました。
「他人が作った、作り物の物語を消費するのではなく、自分自身の人生という物語を脚本し演じろ」
勇者でなければ伝説が作れないわけではない。とにかく何かやらなくちゃ!という心の種火みたいなものをつけてくれる、現代版冒険の書のような本でした。
4位
今年は「伝え方」「プレゼン」に関する本がよく売れたような気がしますが、伝えたいという気持ちの先には「好感をもたれたい」という気持ちもくっついているような気がします。上手に伝えるためにはテクニックが要りますが、好かれるためには、小手先のテクニックだけでは足らないのです。相手を思いやる行動を習慣にまで落とし込むこと、その配慮が人の心を打つことがあると著者はいいます。
多くの習い事と同じように、まずは本書に書かれている「好感をもたれるための型」のようなものを徹底的に学ぶことが大切で、その型を体得することで初めて型にとらわれない粋な心遣いができるようになり、それが真のおもてなしと呼ばれるものになるのではないかと思いました。
お客様と直接接する機会のある職業の方には、ぜひご一読頂きたい一冊です。
5位
タイトルにある「坐る」とは座禅を組むこと。座禅を中心とした暮らしで身体と心を調えることの素晴らしさが書かれています。座禅とはよく「無」になることを目指さなければならないという風に思われますが、私が座禅会に参加して教わったことは、座禅をしながら行うべきことは、立ち上ってくる記憶や思いを、そっと受け止めてそっと離していくこと、一つの思いにとらわれない練習であるということでした。耳を澄まして目を伏せて、口を閉じ、ただ息を数えることで、息をしている体を感じ、今この瞬間生きていることを実感できるありがたさを感じました。
座禅の事だけでなく、永平寺での修行時代の掟とそこから何を学んだか、などなかなか知ることができない禅僧のリアルな姿も垣間見ることができ、読むだけですがすがしい山寺の空気を吸い込んだような魅力にあふれていました。読めば必ず坐ってみたくなる1冊です。
吉川敦子
1982年生まれ。中高大、ならびに就職先もすべて京都。他府県へ出る機会を逃し今に至る。抹茶と和菓子をこよなく愛し、飲み会よりお茶会への出席率の方が高い。
書籍全般を毎日ウォッチしながらも、メイン担当はコミック。
隣の芝生は青いと申しますが、好奇心旺盛なので(飽きっぽいとも言う)そろそろほかのジャンルも担当してみたいなぁ、と思ったりする今日この頃。
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