ビジネス、ノンフィクションよりも最近はフィクション(いわゆる文芸書)ばかりを読んでいる。それ故にHONZでもレビューを書くことができていない。先月は1つしか紹介できなかったので、今月はここで紹介した本の中からいくつかレビューを書けたらいいなと思っている。ビジネス書のレビュー自体あまり書いていないから、いい加減、書かないと書き方を忘れてしまうからね。ということで今月のこれから売る本スタート!
先日、角川書店がアスキー・メディアワークス、エンターブレイン、中経出版、富士見書房、メディアファクトリーといったグループ会社を合併しKADOKAWAという出版社になった。これらの会社はKADOKAWAのブランド・カンパニーという名目になるそうだ。中経出版に電話をしたら、「KADOKAWAブランド・カンパニー中経出版です。」という形で先方の人が電話にでようとしていたのだが、噛み噛みでなんていったのかわからなかった(笑)出版社の人もなかなか大変そうである。またこれらの会社の社長はブランド・カンパニー長という肩書になると聞いた。ブランド・カンパニー長……。なんだかよくわからない。と、いきなり話が脇にそれてしまった。
そのKADOKAWAがグループ会社の力を結集し(?)新時代の戦略指針となる選書を創刊する。角川EPUB選書である。KADOKAWA社長である角川歴彦の『グーグル、アップルに負けない著作権法』、角川アスキー総合研究所の客室研究員、西村卓也の『HTML5で描く未来 クラウド2.0が社会を変える』、起業家・ジャーナリストのクリストファー・スタイナーの『アルゴリズムが世界を支配する』、そしてニコニコ動画などでお馴染みのドワンゴ会長、川上量生の『ルールを変える思考法』の4点である。HONZの読者のみなさんは『アルゴリズムが世界を支配する』が気になるかもしれない。
でも私が店で売りたいのは『ルールを変える思考法』なのだ。YouTubeという動画サイトの巨人を相手に、ニコニコ動画がどういう戦略で戦い、いまの地位を築くことができたのか。その辺りにとても興味があるので、読むのが楽しみである。またこの本は、4Gamer.netというインターネットのゲーム専門のニュースサイトで連載していたものなので、ゲームに関する話と経営に関する話が入り交じっている。著者いわく、この本のコンセプトは「ゲームを心から大好きな、いわゆる“ゲーマー”が社会的に過小評価されているのではないか」という仮説を検証するという名目位のために、著者のゲーマーとしての輝かしい経歴と、経営者としてビジネスで考えていることを抱合せ販売で読んでもらうというものだそうだ。なんじゃそりゃ?って感じもするけれど、そこがなんだかおもしろそうなので期待している。
日経ビジネスオンラインの大人気連載「勝つために見る映画」を書籍化したものだ。著者は映画監督の押井守。これがすこぶるおもしろい。映画好きの人は必見だ。『マネーボール』や『プライベート・ライアン』といった映画の中からビジネスに使える様々な教訓を押井守が引き出している。自分の作品である『機動警察パトレーバー2』についても組織という観点で紹介しているようなので、そのあたりは楽しみである。
アップルやグーグルのことを書いた本というのは多く存在するけど、アマゾンや創業者のジェフ・ベゾスについて書かれた本はあまり多くない。思い浮かぶのは『アマゾン・コムの野望 ─ジェフ・ベゾスの経営哲学』と、『ワンクリック』の2冊くらいである。中でも『ワンクリック』はとてもおもしろい本だった。(私が過去に書いたレビューはこちら)アマゾンの創業当時のことが描かれている。そのなかでもジェフ・ベゾスが、アマゾンを創業する前に書店開業セミナーに出席していたという話が秀逸だった。この本は『ワンクリック』とともに読んでほしい。アマゾンのことを書いた本の決定版となるかもしれない。宇宙産業進出とか、ワシントン・ポスト買収といった最新のトピックについても言及されているので、ベゾスが何を考え、これからどこを目指していくのか?といったことがわかる本のようだ。これは楽しみである。(書影がまだなかったので、原著の書影を代わりに使用しています。)
最後はこれから発売される本の中で、一番注目しているものを紹介する。堀江貴文の『ゼロ』だ。この本は100万部を目指すということで、出版界のオールスターといってもよいメンバーでつくられている。その製作過程はすべてcakesで公開されており、発売前から著者自らが全国の書店を行脚して、この本に対する熱意と本の存在意義を伝えてまわっている。私の働いている書店にもいらして、この本の話を本人から伺った。
そのときに0章のゲラを頂いたので、これを読んだところ、ものすごい感銘をうけた。数十ページを読んだだけなのに、この本からは名著の匂いがぷんぷんと漂ってきているのだ。稲盛和夫の『生き方』や松下幸之助の『道をひらく』といった、時代に左右されない不朽の名作となる予感がしている。この本はたくさんの人に届けなければならない。そう思って、おもいきった数を注文してしまった。だから売らねばならない。日本で一番この本を売ってみせる。堀江さんは多くの人に誤解をされていると思う。この本が世にでることで、その誤解もきっと解消されるはずだ。100万部では足りない、もっとたくさんの人にこの本は読んでほしいと思う。そうすれば、日本はいまよりきっと元気になるはずだ。