『石原慎太郎を読んでみた』を、石原慎太郎が読んでいた!

2013年8月28日 印刷向け表示
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石原慎太郎を読んでみた

作者:豊崎由美
出版社:原書房
発売日:2013-08-26
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著者の一人、栗原裕一郎さんから「石原慎太郎の小説をデビュー作から最近の作まで徹底的に読んで批評するイベントを、豊崎由美さんとの対談でやりたいんですよ。豊崎さんが引き受けてくださったら、大西さん、これ書籍化しません?」と、最初に相談されたとき、「大丈夫なのかな…」と、びびらずにはいられませんでした。

 

だって石原慎太郎といえば強面なイメージがあるし、文壇のドンみたいな人でしょう。弊社のごとき弱小出版社が文句をつけるようなことをしたら消されちゃわないかしら、と。

 

それに、豊崎さんといえば、『文学賞メッタ斬り!』でバッサバッサと石原慎太郎の選評を斬ってこられた、いわば宿敵です。はたして引き受けて下さるのだろうか。こんな話をもちかけて、怒られたりしないかな。

 

しかし、躊躇しながらも好奇心に負けて、「やりましょう!」と言ってしまったのです。

 

栗原さん曰く、石原慎太郎のデビュー作『太陽の季節』は近代日本文学史の折り返し地点に出てきた作品で、慎太郎は戦後文学とともに歩んできたと言ってもいい作家だが、小説は今となってはあまり読まれていない。また、太陽族というユースカルチャーを生み出したのをはじめ、大衆文化史の面でももっと研究されていいはず。たしかにそうです。掘れば、おもしろい話が出てきそうじゃありませんか。

 

そうと決まったら、次は豊崎さんを口説きにいかなくては。トークイベントの会場におしかけ、直談判しにいった我々に、豊崎さんはちょっと困ったなあと苦笑されているようにも見えましたが、「わたしも長年、慎太郎にモノ申してきたんだから、責任とらなくちゃね」と承諾して下さいました。

 

こうして始まった「いつも心に太陽を ~慎太郎で巡る現代日本文学60年史~」というトークイベントは、一年続きましたが、何度も「えっ、あのトヨザキ社長が!」と驚くことになります。

 

 

トークイベントの風景

 

 

途中、Twitterで「慎太郎を評価するなんてろくでもない。あんなもの読むに足らない」と絡んでくる人もいました。そうした場面で豊崎さんはいつも「人物と作品は別です。あなたは石原慎太郎の小説を読んだ上で言ってるんですか」と毅然と反論されていました。

 

イベントでの対談をもとに加筆修正し、出来上がった『石原慎太郎を読んでみた』。すごい本になりました。栗原さんの対談中の発言に「石原慎太郎って日本文学史のダークマターみたいな存在」とありますが、これ、「戦後日本の」と言い換えることもできると思うんですね。誰でも知っている、いなくなったら戦後史が変わってしまうぐらいの大きな存在なのに、よくわかっていなかった。その事実に気づかされるとともに、あらためて実態を知ることもできるのが本書なのです。

 

そして、本書が書店の店頭に並び出した直後、事件は起きました。

 

弊社に、石原慎太郎氏ご本人から電話があったのです。用件は「本を読んだ。なかなかよく(小説を)読み込んでくれてて面白かったから、今度この2人とメシでも食いたい」とのことで。

 

ガツンと批判している箇所もあるのですが、どう読まれたんでしょうね。とりあえず、最初に心配したような、消されることはなさそうで、ちょっとほっとしましたけど。

 

「『石原慎太郎と呑んでみた』をやってみれば」とすすめてくださる方々も多くいらっしゃいますが、予定は未定です。まずは皆様、本書をお読みになって、石原氏の真意を想像してみてください。

原書房 編集部 大西奈己

*「編集者の自腹ワンコイン広告」は各版元の編集者が自腹で500円を払って、自分が担当した本を紹介する「広告」コーナーです。HONZメールマガジンにて先行配信しています。

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