装丁がヤバいと、担当編集ながら思う。「自分」がハミ出している(どうかアマゾンの書影を見てほしい)。流通を委託している講談社の審査が、最初は通らなかった。規格外だからだ。新宿の紀伊國屋書店の文庫売り場に行って、どの文庫よりも目立ってやろうと思った。いちばんカバーのフォントが大きかったのは、平野啓一郎の『決壊』(新潮文庫)だった。だから、それを超えてやろうと思った。平野啓一郎と新潮社に、勝った。
我ながら重度の「中二病」だと思う。中二は、一番にならないと気が済まない。天下一じゃ物足りない。宇宙一が常識だ。
本書は、2007年に出版された光文社新書のベストセラー『非属の才能』の文庫化作品である。Bバージンで大ブレイクした漫画家の山田玲司さんは、かつてこの社会と自分に心底絶望していた。一日平均86人もの人が自殺する日本において、希望はいったいどこにあるのか? どうすれば自分らしく生きることができるのか? その答えを求めて始めたのが、ヤングサンデーの漫画連載『絶望に効く薬』(小学館)だった。
幸せに生きるオンリーワンの人たちに直球で「どうすれば幸せになれるか?」と聞いて回った結論は、『非属』であること。もっとわかりやすく言えば、世間の常識や慣例から「ハミ出す」ことを恐れずに、自分を信じること。そう、ハミ出してもいいのだ。むしろ、ハミ出せばハミ出すほどいい。空気を読めだとか、和を乱すなとか、常識をわきまえろとか、本当にクダラナイ。
そんな中二病の妄言を真剣にまとめたこの本は、なんと、2011年の本屋大賞で、特別賞の「中2男子に読ませたい! 中2賞」をいただいてしまった(最終選考はリアル中学二年生が行っている!)。
世の中のサイズに合わせて生きてもつまらない。もちろん、言いたいことはあるだろう。盗んだバイクで走り出すのはいいが、盗まれたバイクの持ち主の気持ちも考えろ、とかね。大丈夫。そのへんも完璧にフォローしてある。
童貞を失っても童貞マインドは失わないように、中学3年生になっても、大人になっても、心の底には中2マインドが誰にでも残っているはずだ。「君のハートに住む情熱のランプ」に、本書を読んで、久しぶりに話しかけてみてほしい。返事が聞こえてこなかったら、あなたは墓石に片足を突っ込んでいる。
星海社 柿内芳文
*「編集者の自腹ワンコイン広告」は各版元の編集者が自腹で500円を払って、自分が担当した本を紹介する「広告」コーナーです。