春です♪ 希望に満ちたこの季節、自分の理想の生活について思い巡らすのもまた一興。新入社員・若手社会人の皆様に手に取っていただきたい一冊です。
若くして「あこがれのマイホーム」も夢ではない。バブルの崩壊と少子高齢化・人口減少により地価の下落・不動産の供給過剰が進み、十分に時間をかけて家を選べる時代がついに到来したのだ。
そこで著者は、家は「がんばらないで」買うことを提案する。お金の面だけ見れば、持ち家と賃貸とで生涯の支払総額はほぼ同じ。家を買う方が得という時代は終わった。ならば家は自分の幸せや自己実現のための「道具」と割り切り、じっくり腰を据えて「理想の家」を探していこう、というのがコンセプトだ。
そこで、問題 — 自分の理想の生活って何だろうか?
この問いにスッとイメージが湧く方は健全と言えるかもしれない。家族・仕事・趣味・やりたいこと、いずれを優先しても良いし、住処を都会/田舎風など住環境で選んでも、家の形や間取りにこだわっても面白い。
他方、「六本木高層マンションの最上階、ジャグジー越しに夜景を愛でる」といったステレオタイプで思考停止の方も、下のチェックリストをもとに”ブレーンストーミング”をされてみてはいかがだろうか。当てはまるものを片端から選び、優先度を付けるだけで自分の好みがかなり明確になる。実は、家の大きさ・豪華さと住む人の幸せに必ずしも相関関係がないことも分かってくる。
とは言え、住まいの快適さはお金で買えるというのもまた真理。マンションの場合100-150万円でフロアが変わり(眺望UP)、200-300万円で角部屋(風通し・明るさUP)が取れる。戸建では、200-300万円プラスで南西角地が取れるケースもあり、500万円の違いは沿線や頭金額に跳ね返ってくる。直近で持ち家購入の予定がなくとも、今から貯金を始めるに越したことはない。
リスクを考えると、お金の面でも「かんばらない」ことが大切だ。住宅ローンは長期国債の金利と連動している。現在の超金利政策を当て込んだローンを組む、また個人でレバレッジによる資金調達をもくろみ、日本版サブ・プライムローンで黒焦げにならぬよう、経済を勉強して賢い買い物を心がけよう。
プロが教える理想の家の探し方は、「足で稼ぐ」のが基本。希望エリアの不動産屋は最低20件回っても、長期で付き合いのできる業者は3件以下に絞られるのが常。そこから少なくとも20件程度の物件情報をもらい、自分で現地に足を運んでみる。業者の車には乗ってはならない。一番見栄えするルートを見せられ、親切を断れないシチュエーションを演出されるのがオチだ。
現地にはゼンリン「住宅地図」(*図書館・役場・法務局でコピー可)と市販の1万分の1縮尺地図は必携アイテムで、現在・将来の周辺環境も洞察してみる。近隣住民の聞き込みも有効で、話好きの年配女性が狙い目だ。本名を名乗り、事情を話せば9割以上の確率で応じてもらえる。
その他、登記簿謄本の見方、避けるべき不動産屋の見抜き方、ローンの選び方に税金対策、不動産広告やモデルルーム活用法や値引き交渉の仕掛け方など、本書では不動産選びに必要と思われる事項が網羅的かつ丁寧に説明されている。
本書の良さは、著者の一貫したメッセージ性と、必要な手順をきちんと説明しようとする愚直さにある。手間暇はかかるが、逆にきちんとした手順を踏めば自分にも「理想の家」「理想の生活」が手に入れられそうだ、という希望が持てる。実は必ずしも家を買うことを勧めているわけではなく、「家は買わない」という結論まで認めており、安心感も持てる。
入門書やハウツー本の役割は、ありもしない楽勝法・儲け話の喧伝や、いたずらに不安を煽る幸不幸・勝敗のレッテル貼りではない。いざ往かん、王道を!
【ご参考】「理想の家」をイメージするためのチェックリスト (本書 p.39-41より引用)
□あなたの会社に近い家を選びたい
□パートナーの会社に近い家を選びたい
□あなたの実家に近い家を選びたい
□パートナーの実家に近い家を選びたい
□海や山に近い家を選びたい
□都会に近い家を選びたい
□畑や田んぼに近い家を選びたい
□静寂のある場所で家を選びたい
□にぎやかで喧騒的な場所で家を選びたい
□繁華街が近い家を選びたい
□仕事の能率や効率を最優先させたい
□子供を育てるのに最適な環境を選びたい
□自分の趣味が思いっきり楽しめる環境を作りたい
□とにかく家ではくつろぎたい
□子供の通学、学区を最優先に家を選びたい
□実家への帰省や山登りに便利な○○線沿線に住みたい
□たくさん集めた趣味の収集品を家に展示したい
□自分の書斎がほしい
□子供に部屋があればよい
□ホテル並みのサービスがほしい
□セキュリティを重視したい
□庭でガーデニングをしたい
□毎晩部屋からきれいな夜景を見たい
□きれいな空気のところに住みたい
□時間を効率よく無駄にならないように使いたい
□子供に友達がたくさんできるような環境を選びたい
□とにかく通勤時間を短くしたい
□休みの日には家の周りで何かしらレジャーをしたい
□満員電車に出来るだけ乗らないようにしたい
□家と事務所を兼用にしたい
□家とスタジオやお店を兼用にしたい
□パートナーが住みたい家を選びたい
□家の近くで農業をやりたい
□とにかく広い家に住みたい
□自分で自由に設計したい
□地震に強い安全な家に住みたい
□人生の自由度をいつも持っていたい
□長期のローンを組むようなリスクをできるだけ背負いたくない
□超豪華な家に住んでテレビの取材を受けたり、友人に自慢したい
□自分の趣味嗜好を取り入れた自分だけの特殊な家に住みたい