『日曜日のアイデア帖 ~ちょっと昔の暮らしかたで楽しむ十二か月~』
大平一枝(著)
ワニブックス (2010/12/10)
放射能なんてものは発見されてからまだ100年くらいしか経っていないのだけれど、あっという間に世の中に普及して、あって当然なものになっている。無線通信にしても同様だ。インターネットなんて奇跡みたいだ。今さら昔に戻りたいとは全然思わないけれども、お正月とか、お盆とか、クリスマスとか、季節のイベントは今も変わらずやっていたりする。言語と同様、「文化の遺伝子」だ。
松岡正剛さんの本にある「フラジャイル」とか「おもかげ・うつろい」という日本の良さは、四季の移り変わりと無縁ではないと思うし、そんな国でなんとなくふわっとしているというのが国民性だろうと思う。本書によれば「たとえば暮れゆく夕焼けを見て独特のせつない気持ちや郷愁を感じるのは日本人だけです。それは、日本人が受け継いできたミームがそうさせるのです」だそうだ。そんな日本で、原子力という絶対性が事故を起こした。自然に還れというようなファッショになるつもりは全くないけれど、ふわっとした感性で、ふわっとしてない科学技術を、うまいことふわっとさせることがより重要になるんじゃないかと思ったりする。という、ややこしいイントロでいいですか。
本書は、季節のイベントを豊富なイラストとカラフルなページで紹介する、とてもカジュアルな本だ。季節のイベントの話や、由来が書かれていておもしろい。
例えばエイプリルフールは、「起源は、聖書説、十六世紀のフランスの新暦制定時のトラブル説、インドの仏教修行説などいろいろある。日本では、江戸時代から不条理の日と言われ、日頃の不義理を詫びる日とされていた」ということだ。一体どれが正解なのか?まあいいか。4月の木の芽が出る頃に吹く風は「木の芽風」というらしい。新茶が出てくるまでは、玄米をフライパンで炒って玄米茶を作るのがおすすめ。作り方のイラストつきだ。こんな勢いで53回ある日曜日のゆるい過ごし方を紹介している。個人的には2月の味噌作りと、8月の朝顔カーテンをやってみたい。八十八夜の時期にでる紅茶の一番摘み茶は「ファーストフラッシュ」と呼ばれるらしい。8月は電気を消してキャンドルナイトを。ホワイトデーにはブーケを。
こんな感じで季節のイベントを手軽に楽しめる方法が紹介されている。手軽にということは、技術の進歩を利用してということだとも言えるだろう。七草のかわりにクレソンを、という自由さも気楽でいい。ひな祭りは中国由来で日本向きにアレンジしたらしい。昔も今も変わらない。さて、今週はお花見だ。自粛はしませんよ!