『上手な愛し方 The Rules of Love』
リチャード・テンプラー(著) 亀田佐知子(訳)
ディスカバー・トゥエンティワン (2011/02/20)
たまには気軽にこんな感じの本も。
日本ぽい名前のテンプラーさんという著者は、実はイギリス人で、「Rules」というシリーズを出している出版社の人らしい。この本もその一冊だ。以前に書かれた『人生のルール』は、27カ国24カ国語で訳されたベストセラーみたいだ。
まあでも、そんなことはどうでもよい。本書には瞠目すべきポイントがある。テンプラーさんが男性なのだ。
見た目はとてもファンシーな本で、大崎駅構内のちいさい本屋さんでは、女性誌の隣に平積みされていた。そんな感じなので、まえがきを飛ばし読みした私は、“妻とわたし”という表現が出てくるまで女性の著者だと思っていた。ん?リチャード?
この本は、商売をしている男性社長の目線で書かれている。なので、この本を読んで得をするのは(外国人)男性の心理を知りたい女性です。
だって、とりあえず、男性の友人が読んだコメントが「愛し方と言っているが、むしろ人間関係において大切なことばかり」である。自分の感想は「これは愛し方というより、セルフコントロールのための本だな」であった。サンプル数は少ないが、男性が読むとけっこう納得することが書いてあるということだ。見るべきは価値観である。
そして、飛ばし読みしてしまった“はじめに”に、極めて重要なことが書かれていた。「本書を書くにあたって、わたしはあらゆる種類の人を観察し研究した。愛に関してほとんどの人はとても苦労している。しかし、少数ながら、極めて有能な人が存在するということだ。」
つまりこの本の88個のルールは、「少数の極めて有能な人」がやっていることだったのだ。じゃあ、これ、反対に読んだら、我々凡人の話になるのか?
本書のルールをちょっとだけ反対にしてみた。なんというリアリティか!!!
・愛のサインを見逃す
・自分からは絶対に謝らない
・プライバシーを尊重しない
・過去の恋人を基準にする
・笑顔にしてくれない相手を選んでしまう
・パートナーの友人の悪口を言う
・別れの責任は相手にあると考える
・相手が必要とするときにそばにいない
本書における88個のルールの裏側に、ドラマが潜んでいる。そのドラマが人生を彩っていたりすることもあるのではないか?
『赤めだか』では、談志が「落語は人間の業の肯定である」と言う。ブリジット・ジョーンズが愛されているのも「ルール破り」ばかりしているからかもしれないと思う。
改めて言うが、本書のルールは、わりと納得できるものだと思う。そして、フムフムと読んだら、ルールを反対にして想像してみたら、それはそれでおもしろい人生だ。そんな、1粒で2度おいしい一冊。