本書は37人の本好きが寄稿したオムニバスだ。編者は作家の池澤夏樹である。ランダムに名前を挙げてみてもじつに多士済々である。吉野朔実(漫画家)、写真家の石川直(写真家)、今福龍太(文化人類学)、岩盾幸雄(幸福書房店主)、上野千鶴子(社会学)、五味太郎(絵本作家)、最相葉月(ノンフィクションライター)、土屋俊(哲学)、四釜裕子(編集者)などだ。もちろん鈴木敏夫、池上彰、紀田順一郎、内田樹などの一般的に知名度の高い人も寄稿しているし、当然のことながら松岡正剛も書いているのだが、本質的に人選がじつにシブい。
その中で一人だけネットワーク外部性などという理屈をもちだして、浅学菲才を隠し通そうとしている寄稿者がいる。なにもグーグルは怖くないなどということを、怪しげなWindowsの例などを引き合いに説明する必要もないはずだ。ともあれこの寄稿者は原稿を書くときに手が震えていた。なにしろ岩波新書とは中谷宇吉郎の『雪』である。白川静の『漢字』である。そもそも新書の形式は岩波新書から生まれたのだ。他の新書には悪いが、岩波新書に書けるのは名誉なのだ。とはいえ、それを名誉だと思っているのは少数派になってるかもしれない。ふふふ。でも嬉しいのだ。