『ヘンな特許100連発』新刊超速レビュー

2012年11月30日 印刷向け表示
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ヘンな特許100連発

作者:
出版社:鉄人社
発売日:2012-10-25
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「ビニ本」漁りがとまらない。誤解しないで欲しいが、ビニールで包装されたポルノ雑誌ではない。そちらも嫌いなわけではないが、私が今、言及しているのはビニはビニでも「コンビニ本だ」。雑誌コーナー近くに売っている、見るからに粗悪な紙でつくられた簡易本である。宇宙人がどうとか山口組がどうとか、HONZ読者が引いてしまうタイトルも少なくないが、中には500円前後の価格以上の内容のものも少なくない。偉そうなことを書いたが、東京と埼玉県の県境で、ヤンキーが跋扈する自宅近くのコンビニに長時間滞在して選書する勇気もなく、最近はアマゾンで買っているのは内緒だ。

そうした何とも魅惑的な「コンビニ本」の一種である本書はタイトル通り、変な特許をひたすら紹介し続ける。6章構成、全225ページ、100特許。すべての特許が見開きイラスト付きで、これが550円なのだから驚きだ。

目次をながめる限り、「正気ですかと」と問い質したくなる特許も少なくない。大人用おしゃぶり、乳首つきブラジャー、食べられる歯ブラシ、一人用シーソー、護身用カツラ、大人の玩具による性病の感染防止方法・・・。

中でもぶっとびぶりが目立つのが2章の「外国のアイデアはスゴい編」。ここでは21特許が挙げられているが、一発目からすごい。

「背中を叩いてくれる装置」

肩をもんでくれるではない。肩を叩いてくれるでもない。背中を叩いてくれるだ。出願者の意図としては「落ち込んでいる時など友達がいなくても背中をたたいてもらうことができる」。例えばこんな感じか。

俺「どうしたんだよ。元気出せよ」(装置を使ってぽんぽん背中を叩く)

俺「なんでもないよ」(装置を手で払う)

俺「俺とお前の仲だろ。話してみろよ」(もう一回装置でぽんぽん背中を叩く)

俺「うるさいんだよー」(装置を手で払おうとする)

俺「何だよ。その態度、ふざけるな!!!」(装置外す)

と装置片手に一人で自分で自分のことを励ませたり、ツンデレを楽しめるのである。是が非でも欲しい気がしてきたのは気のせいだろうか。他にも「自分でケツを蹴れる装置」や「ハイタッチしてくれるマシン」など友達いない系の人間には涎だらだら垂らしてしまう特許が2章には並ぶのである。友達にケツ蹴ってもらって喜ぶ人はいないかもしれないが。

3章はお約束のシモ系特許。注目は「性欲電気変換装置」か。出願者の意図は壮大だ。

”性欲は人間ひとりが抱えるにはあまりに大きなエネルギーである。あり余った性欲的生体エネルギーを有効活用すべく、該当する18歳以上の成年男子が掛けてくるであろう任意の番号で登録してある携帯電話を設け、そこで受信された電波をリレー付き光センサーで感知し電気を発電する

わかるようでわからないが、要はタブロイド紙に思わせぶりな三行広告と電話番号を載せてそこにかかってくる電話の電波を増幅させて電球に明かりを灯すという発明らしい。実際、実験したところ電話がじゃんじゃん鳴り大成功に終わったとか。スケールがでかいのか小さいのかわからない話である。

使えそうな特許もある。例えば、「箸不要弁当」。発明というより工夫だろと突っ込まれそうだが、これが何とも実用的だ。

”弁当内において、ご飯類は「海苔付きおむすび」とし、「卵焼き」、「コロッケ」「ハンバーグ」等に「プリッツ」等を突き刺し、「ウズラの卵」に「でんぷん楊子」を突き刺し、「揚げ物」「天ぷら」「ウインナー」「たくわん」「リンゴ」等に「つま楊子」を突き刺し、箸を使わず直接手でつかんでも指の汚れない弁当を特徴とする。”

小学生の遠足のときに箸を忘れて、この世の終わりのような顔をしていたかつての同級生に勧めたくなる発明である。問題はプリッツの強度か。弁当の湿気とプリッツの強度の対決が焦点である。

ふと気付いたが、本書の出版社は以前紹介した『本当は怖い昭和30年代』と同じ鉄人社。同社は『裏モノJAPAN』(13年1月号の特集は「A級女子大生はここで抱ける」らしい・・・。)のイメージが強い人も少なくないだろうが、先入観を持たずに読めば抱腹絶倒な一冊であることは間違いない。

決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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