本書が対象とする読者は、あくまでも伝統芸能の音に興味のある、初心者から中級者までの人だ。つまり、この分野にまったく関心のない人を振り向かせるような読み物ではない。じつに網羅的・総覧的・事典的な本なのだ。とはいえ、これ一冊持っていれば、観劇上のあらゆる疑問に答えてくれそうだ。
つまり、万人向けではなく、通して読む本でもないので準読了としたが、間違いなく書庫では良い場所に鎮座する本である。しかし、その前に2階のトイレに置いておこう。2階である理由は、1階のトイレは白川静専用ボックスだからだ。
トイレに因むつもりはないが、たとえば「下座音楽」の演奏用語などが面白い。「掛かる」は演奏開始。「締める」は静かにゆっくり演奏。「ニュウ消し」は徐々に弱めていって演奏をやめること。など13種が紹介されている。