おそらく若いアーティストを対象として出版された本である。帯には「ムナーリに学べ!ピカソから盗め!千利休に尋ねよ!」とある。見開き1ページで1人のアーティストが登場する。右のページにはそのアーティストの代表的な作品が、左にお言葉が載っている。
まずは帯がお勧めするピカソだ。「アヴィニオンの娘たち」の左には「芸術家とは 何処からともなく現れる インスピレーションをひたすら受け入れる 水がめのようなものだ。」「天、地、紙の切れ端、目の前を横切る形体から そして蜘蛛の巣でさえ。どこかれでもね。」
ムナーリは『きりのなかのサーカス』という絵本に添えて、「デザイナーとは 芸術的センスをもったプランナーである。」というお言葉。
千利休は「まず心がけるべきは 『侘び数寄』というもので これは日常 ごく普通に心に宿るものである。」で黒楽茶碗「面影」の写真付きだ。
どれも微妙な選択だ。もしボクが本書から帯用にアーティストを選ぶとしたら。
キャパ、「崩れ落ちる兵士」の写真に添えて「写真を芸術であるという人は アマチュアである。偉大な人は それを専門の職業だと答える。」
ゴーギャン、「タヒチの女たち」に添えて「自由に そして狂ったように仕事をしなさい。そうすれば君は進歩し 価値ある人間だったら いずれは認められる。」
喜多川歌麿、「ポペンを吹く娘」に添えて「人真似は嫌いで 今まで人の絵を写して描いたことはない。」
の3点であろうか。ともかく、取り上げているアーティストの選択も、それぞれの作品の選択も、お言葉の選択も、じつに微妙なのだ。妙なアンバランスがあって、それを知って読むと不思議な味わいがある本だ。
まさに帯に書いてあるように「才能の伸ばし方、発想法、成功の秘訣、次代を拓くヒント、道の極め方、スタイルの見出し方」について読者が勝手に考えるための本である。