昨日、北沢防衛大臣が武器輸出三原則の見直しに言及して鳩山内閣はまたもやグダグダになっているようだ。なぜ、武器輸出をしなければならないかについてのキチンとした説明もないし、反対する社民党などもこのことについてキチンと理解しているとはとても思われない。政治家にもう少し読書をする時間と意欲があれば日本は良くなるのにと思ってしまう。
本書の骨子は日本の防衛省の武器調達コストは諸外国の3~5倍であり、武器の調達にあたっては20年以上もかけることがあるの2点だ。つまり、最新型ベンツの費用で20年前の軽自動車を買っているというのだ。じつはこのことを要約した第1章を立ち読みするだけで、政治家やミリオタではない普通の人でも納得できるはずだ。本書を読む限り、自衛隊はじつに弱そうな軍隊である。
第2章から第4章までは陸海空それぞれの武器に関する評価なので、いわゆるミリオタが好きそうな内容である。しかし、この類の知識を持つ国民が増えなければ、いわゆる軍人の好き勝手になってしまうのだ。批判的でも好意的でもある必要はない。たんにかなりの数の国民がこの分野の知識をもつだけで、軍人は好き勝手にできなくなるのだと思う。ともあれ、じつは第2章以降がボクにとっては激しく面白いのだが、引用するにはいささか技術的な記述にすぎるかもしれない。
第1章に戻ると、著者は戦争に関する法律についても言及している。たとえば、自衛隊は戦時であっても戦闘車両が道路から逸脱すると道路交通法違反になるので、警察のパトカーが先導しなければならないとか、塹壕を掘るためには地主の事前許可がいるなど、について書かれている。
本当に恐ろしいのは、自衛隊が戦争時に平時の法律に縛られていて戦闘できないことではない。有事において、一気にすべての法律を無視する超越的存在になってしまうことなのだ。まちがいなく敵が上陸してきたときに、自衛隊が警察のパトカーの先導要請をすることはない。即応するはずだ。そして自動的に彼らは超法規的存在になってしまうのだ。それが恐ろしい。国民が軍事から目をそむけているがゆえに、他国の攻撃を糧とした軍事クーデターが制度にビルトインされているのだ。
北沢防衛大臣の発言にもどろう。武器輸出によるメリットについてである。本書はホワイト国にたいして共同開発やコンポーネントや中間財の輸出をするべきだと結論づけている。ホワイト国とはなにか、共同開発は「ガラパゴス化」と阻止できるかについては第5章を読んでほしい。