先日、ロンドンのナショナル・ギャラリーでほぼ丸1日すごした。展示されていたあらゆる絵画のなかで、心底驚いたのはゴッホの椅子であった。圧倒的な存在感。目を離すことができない緊張感。画集で見るのとは全く違うのだ。これだから、芸術は実物にあたってみなければわからない。ゴッホはひまわりが有名だが、椅子とは比べるべくもない。たんに椅子が描かれている絵を見てこれほど感動するとは夢にも思わなかった。
帰国してから、書庫にあった画集をとりだして眺めてみたのだが、やはり写真では椅子はゴッホの作品の一つにしか見えない。不思議なものだ。そこでアマゾンで調べてみたら本書が見つかった。全油彩画が掲載されているというので、画集というよりは椅子にいたる変遷をざっと眺めてみようと思ったのだ。
昨日届いたのだが、これまた心底驚いた。いったいこの本はなんなのだ。736ページもあるから背はなんと4.8センチもある。手元にある携帯電話の横幅と同じだ。19.6X15.0でA5版に近い。画集であるから、ほぼ全ページがカラーだ。手元の料理用の秤は1kgが限度なので、体重計で測ったところ、重さは1.4kgだった。それで1900円(本体)なのだ。100g136円という圧倒的な安さである。
さらに不思議なのは、アマゾンで新品を1900円で買えるのに、なぜか中古商品は3400円で出品されていることだ。プロの古本屋さんが常識的に付けた値段が3400円だということであろう。まさか、本書が1900円で販売中だとは普通は考えられないと思う。
ゴッホ好きの人に限るかもしれないが、本書は買って損はない。ライナー・メッツガーらによる解説も素晴らしい。本書の出版社であるタッシェンの25周年記念出版だそうだ。それにしても凄すぎる。なに考えてこの値段にしてしまったのだろう。
ちなみにアマゾンでは本書は洋書に分類されているが、すべてこなれた日本語に翻訳されている