最近サイエンス・アイ新書が面白い。月に最低1冊は買ってしまう。7月に『暮らしを支える「ねじ」のひみつ』を紹介したが、8月は本書だ。6月には『ヘリコプターの最新知識』を買っている。
この新書の特徴は写真がふんだんに使われているということだ。つまり大量の著作権処理を商業的に行っているということであり、これがwikiなどのネット百科への対抗手段にもなっているようだ。
それはともあれ、本書のテーマであるイージス艦とは海上自衛隊護衛艦のいわば最新バージョンのことだ。わざわざ「海上自衛隊」と断っている理由は、「護衛艦」という用語は専守防衛の日本だけが使っているだからだ。つまり、タンカーや貨物船などの民間船を護衛することをもっぱらとする軍艦という意味らしい。アメリカ軍においてのイージス艦は空母艦隊の防空、または対地対艦攻撃を行う軍艦だ。ちなみに護衛艦は外国においては駆逐艦(デストロイヤー)や巡洋艦(クルーザー)に相当する。
本書によれば、運用数順にアメリカが77隻、日本が6隻、ノルウェーが5隻、スペインが4隻、韓国が1隻とのことだ。英仏は持っていないらしい。イージスシステムとは強力な対空レーダーにバックアップされた、誘導ミサイルシステムのことだが、じつは普通の大砲も装備している。
自衛隊の「こんごう」には5インチ(127mm)砲が装備されており、1分間に45発も発射できるのだという。じつは先週木曜日、陸上自衛隊の夜間総合火力演習を見学してきた。はじめて目の前で戦車が120mm砲を撃つのを見たのだが、そのとんでもない大音響に心底驚いた。冗談抜きに心臓の悪い人は見に行くべきではない。あれが1分間に45発も発射される状況など全く想像できない。
ちなみに現代の戦車はキネティック弾というまさに矢のような形をした砲弾か、HEAT弾という火薬を仕込んだ砲弾の2種類を使う。90式戦車の120mm砲が使うキネティック弾の発射体重量は10キロほどだ。
ところで、戦艦大和はいまだに世界最大である460mm砲を9門も装備していた。発射する砲弾の重量は1.46トンだった。『戦艦大和 砲声の謎』によると、主砲発射訓練のときに砲塔横にモルモットをおいてみたところ、身体は四散していたという。もちろん、砲塔内部には爆風こそこないが、とんでもない振動で失神する者もいたため、発射後は互いに肩を叩き合って意識があるかどうか確かめていたというのだ。
42kmもの射程をもつ化け物弾を発射するのに使用した火薬は330kg、発射時の砲身には3300気圧(3万3000メートルの深海底に相当する!)も圧力がかかるため、200発で砲身は寿命を迎えることになるというのだ。
一方のイージス艦に装備されている誘導ミサイルは対艦ミサイルのハープーンでも150kmだし、巡航ミサイルのトマホークの最大射程は2500kmに及ぶ。しかも本書によるとイージス艦を「自動特別モード」に設定すると、いっさい人が介入せずにすべての目標を全自動で迎撃できるというのだ。もし、戦闘になると大和はイージス艦を見る前に沈んでいることになる。
じつは『戦艦大和 砲声の謎』にはCDが一枚付いてくる。主砲の発射音だとするテープを収録したもんだ。これがホンモノか否かは本書を読んでのお楽しみである。