買(こ)うてや、買うてやぁ~! 安いで安いでぇ~。なんと、こんだけ大きいて立派な本が5千と7百円っ! 税金入れても、6千円で15円のおつり。え? 6千円もする本は高いて? アホなこというたらあかんがな。ものを買うかどうかは、値段で決めたらあかん。値打ちで決めなあかん。学校で習わへんかったんかいな。うそ言わへん。こんだけの本が6千円でおつりっちゅうのは、びっくりするほどの買いもんやで。
なんの本か、て? 『アートで見る医学の歴史』、いう本や。アートて引っ越し屋さんが出した本か、て? なんでやねんっ! アートいうたら芸術やがな、げ~じゅつ。そんなもん関係ないてかいな。あかんあかん、そんなこというてたら。芸術の秋やねんから。それに、これからの世の中は、グリーンとバイオ、環境と生命科学や。そんなこと、いまごろ小学生でも知ってまっせ。
そやかて医学にもアートにも興味あらへんてかいな。なにいうてますねん。この本を読んで、興味と教養を身につけたらよろしいねん。人生80年やねんから、まだまだこれからでっせ。歴史、て書いたぁりますけど、心配せんでも、ややこしいこと書いたぁりませんわ。ほんまにいろんな絵や写真、医学に関係するもんが、ぎょうさん載ってて、なんぼ見ても飽きしません。和洋中、それに、昔の呪術関係まで、なんでもあり。それだけちゃいまっせ、最新の、それはきれいな電子顕微鏡写真やらまで載ってんねんから値打ちもんやで。
難しそうや、てかいな。ぜんぜんそんなことあらへんって。説明は短こうてわかりやすい。もともとは英語の本やけど、翻訳したはんのは矢野真千子。え? NHKの連ドラ「カーネーション」に出てガラの悪い岸和田弁しゃべりながらミシンで服縫うてた人か、て? ちゃうっ。それは尾野真千子っ。矢野真千子さんいうたら、あの『解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯』や、これ一冊読んだだけでゲノム科学がわかってまうっちゅうすごい本、フランシス・コリンズの『遺伝子医療革命』を翻訳しゃはった、科学ノンフィクション翻訳家の中でも、いっちゃんようできる人やがな。
そんなええ本が安いゆうのはおかしい、てか? 大阪のおばはんは疑い深いから困るなぁ、もう。でもな、そやねん。実はおっちゃんにも不思議やねん。そやけどな、この本、だいたいが、ウェルカム・コレクションにあるもんが載ってるらしいわ。ウェルカムて、いらっしゃぁ~い、いう意味やろて? なにを、桂三枝、今は文枝になったけど、みたいなこというてんねん。ちゃうっ、人の名前っ。
昔、ヘンリー・ウェルカムさん、いう人がいたはって、薬で大もうけして財団を作らはったんですわ。その財団、いまでもごっつう大きいて、医学研究にいっぱい研究費をだしたはんねんけど、その事業の一つがウェルカム・コレクション、いうことらしいですわ。ひょっとしたら、この本、その財団が出版に力を貸してて、こんだけ安ぅなってんのんとちゃうか、とにらんでますねん。そやないと、こんな値ぇで売れるはずあらへん。
そんなおっきい重たい本、買うたかて持って帰られへんてか。わかった、おっちゃんから買わんでもええ。Amazonで買うて送ってもらい。どこで買うてくれてもかまへん。こういうええ本がみんなの家にあって、ちょっとでも医学のことに興味を持ってもらうっちゅうことが何より大事やねんから。太っ腹やて? そうや、毛ぇはないけど、腹は出てる。それて、最低やがな… まあええ。実はな、おっちゃんも、Amazonで買うてん。びっくりしたでぇ。いままで見たこともないごっついサイズの箱で送ってきよったわ。それだけでも値打ちもんやで。
買うてや買うてやぁ~、こんな値打ちのある本、めったにおませんでぇ~。