200あまりの時代小説に使われている武士言葉を集めた本だ。帯から拾いあげると「これはしたり」「このところ手元不如意でな」「慮外なことを」などなど、いわゆる時代劇でお侍が使う言葉の解説書だ。タイトルどおりにはあまり使う気にはならない武士言葉であるが、著者にあっては大儀である。
構えて言うが本書で扱うのは武士言葉であり、町人が使う言葉はあまり取り上げられてはいない。たとえば「てやんでー、べらぼうめ」や「尻腰(しっこし)のねえ野郎だ」や「てえげえにしやがれ」などの言葉の扱いはない。ちなみに「尻腰」とは度胸、意気地、根気などの意味を持つ言葉だ。歌舞伎好きであれば何回か聞いているに違いない。弁天小僧が女装に疲れて正体をあらわすときに、南郷力丸があきれて物言うところだ。
この本の出版以降、ぞろぞろと後続本が出版されている。この現象の背後には人気の武士言葉変換サイト「もんじろう」の影響があるのだろう。それにしても先行本である本書の作りは軽い。時代小説から言葉を抜き出して軽く解説しているだけだ。
ではなぜ本ブログで本書を紹介したのかというと、朝方書庫を整理していたら上から本書が落ちてきて頭を直撃したのだ。「下郎め、猪口才な」と手にとったのが本書であった。とはいえ、時代劇ファンはトイレに常備しておくと楽しめるであろう。一回に一つの言葉を読みきれる分量なのだ。
ちなみに「もんじろう」のURLは