文字どおり幕末から明治にかけての肖像写真集である。天皇家、皇族、公家、志士、軍人、経済人などあらゆる分野から200人、450点の写真を収録している。装丁は良いのだが、本文デザインがダメすぎる。写真のレイアウトにインパクトも工夫もないし、文字が小さすぎるので、主要な読者層であろう中高年にはじつに読みにくい。各ページにインデックス風の飾りがあるのだが全く意味をなしていない。素人の仕事だ。
しかし、素材たる写真がじつに面白いのだ。あらゆる分野の人々のなかで、もっともイケメンなのはじつは天皇・皇族だ。男性皇族が美男であるだけでなく、お后さまたちも美人揃いだ。明治天皇はバランスのよいレイアウト、濃い眉毛、強い目元でじつにかっこよい。有栖川宮威仁親王は知的なイケメンで、ジャニーズ事務所がスカウトしそうだ。
維新の立役者の中では岩倉具視が良い顔をしている。深慮遠謀、意志強固、博学多才を具現している。現代の政治家にはいない顔だ。木戸孝允も良い。髪型が現代風で、きちんとスーツを着ているためかもしれないが、現代のできるビジネスマンそのものだ。中岡慎太郎も高杉晋作も、妙な表現だが、そのまま大河ドラマで自分の役をできそうである。役者顔なのだ。
驚いたのは桂太郎だ。どうしても陸軍出身なので、山県有朋のように頬骨の張ったごつい顔をイメージしてしまうが、じつはふっくらとした可愛い顔をしている。おなじく軍人の乃木希典もイメージと違う。帽子を取るとクリクリの天然パーマだったのだ。東郷平八郎もなぜか痩せぎすのオジサンを想像していたのだが、目も大きく立派な顔立ちだ。
ちなみに450枚の写真に笑顔は一葉もない。毎日、テレビでバカ笑いをしている人たちを見ている目からすると新鮮そのものだ。