帯には「京大で受けたい授業No.1の名物教授が教える、14冊の革命的な書物」とある。たしかに、本書は授業そのものだ。14コマの授業を受けているような気になる。紹介されているほとんどの本は誰でも素性は知っているが、じっさいはあまり読まれていない本だ。
ダーウィンの『種の起源』ファーブルの『昆虫記』はいうにおよばず、カーソンの『沈黙の春』まで押さえてある。1冊の本を著者の人物像、内容の概略、出版後の世界の変化、エピソード、関連した現代の読み物の提示という順番で紹介する。1冊につき14~5ページと手ごろにまとまっていて読みやすい。
ほとんどの書物と人物については知っていたつもりだったが、新しい発見がそこここにある。ダーウィンが64歳の時に受けたアンケートへの回答。
質問「どのような教育を受けましたか?」
回答「何か価値があることは、自分で学んだのだと思います」
わが意を得たりだ。本書の著者も「悲しいかな、アインシュタインと私を分けたのは、試験を通過するために私は大切な頭を社会や古文の暗記に費やしてしまったことだった。」と述懐している。文脈から読みとると社会や古文がつまらない学問だという意味ではない。理系の研究者にとって、まったく異なる分野に時間を費やすことがつまらないというのだ。
ほかにもガリレオの『星界の報告』がラテン語で書かれていたのではなかったとか、「メンデルのブドウの木」は日本にしか残っていなかったとか、フランス人は犬よりも小さな生き物は目に入らないそうなのだ、まあ、最後のフランス人の話は面白すぎるが、各章で「へー」の連続だ。
いちばん驚いたのは世界物理年の2005年に行った投票で誰が一番物理学に貢献したかという問いがあり、科学者の8割がニュートン、2割がアインシュタインと答えた。順当である。しかし、一般市民の6割がニュートン、4割がアインシュタインと答えたとのエピソードだ。恐るべし一般市民。