久しぶりに仰天した。レイチェル・カーソンの『沈黙の春』を読んだときも、見えざる毒物の恐ろしさに体が震えたが、この本はさらに悪質な毒物を意図的に放置しているアメリカという国を告発している。
たとえばノースカロライナのキャンプ・ルジューン海兵隊基地では70年台の終わりから動物たちが死にはじめ、やがて海兵隊の家族たちはガン、先天異常などの多発に悩まされる。原因は軍による過塩素酸塩を含むロケット燃料の敷地内不法投棄であり、地下水に依存した上水道システムにある。この毒物は2004年時点でもアメリカの35州の飲料水で検出されているという。
中国の環境問題と比べると被害人口的には無視できる規模かもしれないが、将来アメリカ軍が支払う可能性のある医療費を考えると、将来の軍事バランスに影響を与えかねない規模である。
本書ではこれ以外にも予防接種ワクチンに含まれるチメロサールという物質が自閉症の原因物質であることや、乳癌検診こそが乳癌を増やしている可能性があること、そしてもちろんタバコの害について告発をしている。
ところで、1962年にレイチェル・カーソンが指摘した農薬DDTによる健康被害問題については、現在に至るまで論争が続いている。DDTが禁止されたためにマラリアが増え、結果的に人類にとって不利益になったというのである。DDTは民主党のケネディによって禁止されたが、共和党のパパ・ブッシュ時代には解禁への動きがあった。11月4日、アメリカ人はどちらを選ぶのであろう。