江戸幕府の隠密が大名を調べ上げて報告した「諜報記録」を読み込んで、徳川光圀、前田利家などの裏話を取り上げた本。だと、思ったらそれは前半だけ。後半は利家なきあとの前田家存亡を担った前田利長、利常親子のエッセイである。『殿様の通信簿』とは、明らかに手っ取り早くタイトルで売ろうという編集者の先走りだ。帯にも「従来の”殿様像”を一変させる瞠目の書」と仰々しく、著者でなくても気恥ずかしい。
ところが内容は実に面白い。どの章をとっても、時代小説の一本も書けそうな気がしてくる。もう少し各章にボリュームがあれば、小説仕立てにするよりも面白いかもしれない。