8月8日は鈴木葉月の誕生日である。この佳き日に初めての公開HONZ朝会が、オープンしたばかりの書店、下北沢のB&B(Book & Beer)で開催された。参加申し込みなどは一切行わなかったので、朝7時からのこんな集まりに来てくれる人はいるのか、と危ぶんでいたのだが、なんと20人以上が参加してくださった。
B&Bの真ん中にいつものように丸く座って朝会開始。今日の欠席は栗下直也、村上浩、一色麻衣。三人とも気合を入れて選書していたようで、欠席の連絡メールに悔しさが滲み出ている。メンバーを囲んでギャラリーのみなさんの興味津々の目が痛い。
道に迷って最後に到着した麻木久仁子から今回は開始。
詩歌と戦争―白秋と民衆、総力戦への「道」 (NHKブックス No.1191)
- 作者: 中野 敏男
- 出版社: NHK出版
- 発売日: 2012/5/26
いやま、ものすごい付箋の数である。誰かが「貼ってないところのほうが目印になるんじゃない?」というほど。北原白秋の童謡を中心に、郷愁や感動をどのように戦争に利用したかを論じた本らしい。
こちらも付箋がびっしり。終戦したのち、撤退がいかに難しいか、アメリカが教訓として何を学んだのか、という話で、まとめると「アメリカもたいへんやね」ということだとか。
女子・結婚・男選び: あるいは〈選ばれ男子〉 (ちくま新書)
- 作者: 高田 里惠子
- 出版社: 筑摩書房
- 発売日: 2012/7/4
これはHONZ独身女子連、および、たったひとりの独身男性である鈴木葉月にぜひ読んでもらいたい本だそうだ。自身の経験はともかく、読んでみると「なるほど」と納得するらしい。
こちらも道に迷った内藤順
人体の不思議展が問題になったが、倫理問題を考える。
かなり話題になっているスポーツをするための義肢や義手について。開発したのはニッサンの車やSUICAをデザインした人らしい。
Google Earthで行く火星旅行 (岩波科学ライブラリー)
- 作者: 後藤 和久、小松 吾郎
- 出版社: 岩波書店
- 発売日: 2012/8/3
22世紀を舞台にして描かれているそうだ。3Dメガネをかけて麻木がびっくりしていた。
いよいよ今月末に帰国が決まった久保洋介。今回もパソコン画面で参加。
米軍が恐れた「卑怯な日本軍」 帝国陸軍戦法マニュアルのすべて
- 作者: 一ノ瀬 俊也
- 出版社: 文藝春秋
- 発売日: 2012/7/20
これはワタシが持ってきていた。米軍が恐れた、不意打ちや地雷、仕掛け爆弾といったゲリラ戦法の元祖は何か。
この世で一番おもしろいマクロ経済学――みんながもっと豊かになれるかもしれない16講
- 作者: ヨラム・バウマン、グレディ・クライン、山形 浩生
- 出版社: ダイヤモンド社
- 発売日: 2012/6/1
丸善の洋書コーナーで一番売れている本だそうだ。マンガで説明されているのでとてもよくわかるらしい。
ありきたりな商社の歴史をまとめた研究書ではなく、財務データやインサイダー情報をしっかり考え合わせた上で書かれた本らしい。
赤裸々なHONZ活動記が面白かった新井文月
アーティストの登場と主義主張を10年ごとにまとめ、美の概念をざっくり100年ごとに俯瞰した本。
天下の茶道具、鑑定士・中島の眼: 『へうげもの名品名席』実見記
- 作者: 中島 誠之助
- 出版社: 淡交社
- 発売日: 2012/6/18
NHKで放映されている「へうげもの」というアニメの最後に、鑑定士として登場している中島誠之助。国宝級のものが紹介されているそうだ。
図解!! 生き残るためのやりかた大百科―緊急時に役にたつ(かもしれない)175の豆知識。
- 作者: Joseph Pred、和田 侑子
- 出版社: パイインターナショナル
- 発売日: 2012/7/16
どんなときでも生き残る、という信念を持つ人が心得なくてはならないノウハウを図解。日本人にはあまり必要のない項目もあるらしい。
ギャラリーに突っ込まれてちょっとびっくりの高村和久
OUT OF AFRICA アフリカの奇跡 世界に誇れる日本人ビジネスマンの物語 (OUT OF AFRICA)
- 作者: 佐藤芳之
- 出版社: 朝日新聞出版
- 発売日: 2012/7/20
発売と同時にHONZ内で争奪戦があった本。先にレビューを書いた高村が勝者となった。
新井が習った美大の先生が書いた本。太古から伝わる様々な壁画を調査した結果、シャーマンは存在していただろう、と。美術的な評価もしている。
宗教とツーリズム研究会というものがあり、その会員がまとめた研究書。最初は「何だそれは?」と思っていたが、いやこれは面白そうだ。
月一書評が定着してきた足立真穂
自筆で書かれた最後の自伝。真の絶筆。
幸福な食堂車 ― 九州新幹線のデザイナー 水戸岡鋭治の「気」と「志」
- 作者: 一志 治夫
- 出版社: プレジデント社
- 発売日: 2012/7/13
九州新幹線を中心に書かれたもので、鉄道ファンは必読。
カバンの中から取り出した大判の本を見て、メンバーもギャラリーも「おお!」と声を上げた一冊。重かったろうに…パート3にはぜひB&Bも選ばれてほしい。
本日も多忙でスカイプ参加の仲野徹。研究室で、すでにノリノリ。
大宅賞受賞のノンフィクション作家、: 角幡唯介のエッセイ。文章がすばらしいそうだ。
ぼそりと成毛が「読んだ」とつぶやく。実験の精度を上げるにはどうしたらいいかなど役に立つ情報がはいってるそうだ。著者は50歳にして未だ研究助手なので、みんな買ってあげて、とのこと。
急になんだか難しい本になったけど、要するに自分が気持ちいいように決定すれば成功するんだそうだ。ふうん。
新井文月の主催している被災地ボランティアに参加している刀根明日香
これはうら若き女子が選ぶ本とも思われない。エンジンを初歩から解説する。図説なども丁寧なのだそうだ。「そんな本より『女子 結婚 男選び』を読みなさい、と麻木に恫喝されていた。
7月の締め切りは殺人的だったようでひとまわり痩せた土屋敦
たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く (角川文庫)
- 作者: 石村 博子、、石村 博子のAmazon著者ページを見る、検索結果、著者セントラルはこちら
- 出版社: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/7/25
8月なので戦争ものを紹介する。これは新たに文庫化したもので満州からの引き揚げ時、日本柔道界・アマレス界にも大きな影響を与えた男・ビクトル古賀が少年時代、混血だからと誰からも面倒を見てもらえずに1000キロをたったひとりで帰ってきた話。
別府の絵葉書を集めた写真集。かなり分厚い。
サツマハオリムシってどんな生きもの?-目も口もない奇妙な動物 (もっと知りたい! 海の生きものシリーズ)
- 作者: 三浦 知之
- 出版社: 恒星社厚生閣
- 発売日: 2012/7/9
深海の生物なのだが、なぜか薩摩湾だけは浅瀬にいるらしい。ムシもののレビューはなかなか読んでもらえないというジンクスがある。
新しい事業のため、さまざまな会社と接触しているらしい山本尚毅
太平洋戦争後、現地に残った日本人は1万人とも言われている。山本が、先日ミャンマーで仕事した女性も、父親が死ぬ間際になって日本人であることを明かされたのだそうだ。若き研究者の「残留もの」
ラマルクの進化論から説いていく新書。
複雑ネットワーク研究で、人間行動の予測可能性に迫る!
とうとう大学院を辞めてHONZの専属エディターになってしまった井上卓磨
「悪意の情報」を見破る方法 (飛鳥新社ポピュラーサイエンス)
- 作者: シェリー・シーサラー、菊池誠、今西康子
- 出版社: 飛鳥新社
- 発売日: 2012/8/1
インターネットの普及から、流言蜚語が飛び交う現代に身に着けたいスキル。
お盆前の締め切りで青息吐息の東えりか
デヴィッド・ギルモアと言ってもピンクフロイドのギタリストじゃない。カナダの映画評論家で作家が、ドロップアウトした息子と映画を見て過ごした3年間。
うわっ、と成毛が声を上げる。どうやら上の本と両方ともカブたらしい。虫から人間まで、群れや集団にまつわる科学の解説。かなり手ごわそう。
同時発売の2冊。東日本大震災で300人以上の顔を修復した納棺師の女性が自ら書いた本。特に絵日記のほうは、数ページで涙が出てきて読めなくなった。
誕生日の今日も大量の本を抱えている鈴木葉月
古代から原爆まで、科学者が戦争に関わったさまざまな出来事。
原発再稼働「最後の条件」: 「福島第一」事故検証プロジェクト 最終報告書
- 作者: 大前 研一
- 出版社: 小学館
- 発売日: 2012/7/25
袋から出すと、また「おう!」という声。大判の写真集だが図解も多く、大前研一の説明もわかりやすい。意外に値段も安かった。
毎回楽しみな、鈴木葉月のお勉強シリーズ。今回は俳句。そのうちHONZ句会でもしてみようか。
昨晩、35年前のルームメイトがSNSで見つかり、ほぼ寝ないでチャットしていた成毛眞
説明がほとんどない洋家具の図鑑。きれい。
1982年に出版された本の新装版。ヴァイオリンの薀蓄が満載。ストラディバリウスがまだ2億円ぐらいだったときの本。
遺伝子の不都合な真実: すべての能力は遺伝である (ちくま新書)
- 作者: 安藤 寿康
- 出版社: 筑摩書房
- 発売日: 2012/7/4
親から子への能力の遺伝の正体を解きながら、教育と人間の多様性を考える。かなり過激な内容らしい。
最後に欠席者のオススメ本。
バイト先の出席必須の説明会のため欠席の一色麻衣
痛い出費だが軍事とのかかわりが面白いらしい。
ギャラリーが一番会いたかっただろう栗下直也
完全なタイトル買いだそう。どんなレビューを書くのだろう。
多くの小説にも書かれたカッコイイ特急「あじあ」について
オリンピックに絡めたネタだそう。今回、日本が強いのでみんな寝不足だ。
最近のレビューがことごとくヒットしている村上浩
本人のコメントをそのまま載せると
原書は10年前に出版され、欧米では既に古典的教科書となっているようです。専門的な話が厳密に進められていくので、読むのに骨が折れますが、かなり面白いです。公開朝会用に、値段(4000円)も内容も背伸びして購入した隠し玉でした。
狭義の脳科学の範囲にとらわれない、幅広い範囲のサイエンスネタが満載です。詳細な解説にはあえて踏み込むことなく、普段サイエンス本を読まない人でも楽しめるようなつくりになっています。
これは麻木も持ってきていたがちょっと食い足りなかったらしい。HONZメンバーは岩波ジュニア文庫を好きな人が多い。
さて一巡目で時間はちょっとオーバー気味。あとはスピードを上げて次回紹介する。
メンバーもギャラリーも最初はちょっと緊張気味だが、始まってしまえばいつもどおり。ただ、選書がちょっとよそ行き気味の人もいたような。本に囲まれて行うHONZ朝会、なかなか雰囲気がよくて楽しかった