今月号の「芸術新潮」は大友克洋特集だ。ボクはほとんどマンガを読まないのだが、大友作品だけは美術書として、本として買っている。大友と同様、非常に緻密に人物や建築物などを描き込む画風で人気の高い山口晃が画家と呼ばれるのに対して、その山口に大きな影響を与えた大友は漫画家と呼ばれる。まあ、ご本人はどっちでも良いと思っているのだろうが、この違いを不思議に思っていた。「芸術新潮」でまさに芸術として取り上げられて、ファンとしてはとても嬉しい。
特集のなかで美術評論家の椹木野衣は「マンガという枠組みだけでとらえているようでは、まだまだ甘い。黒田清輝、岸田劉生、藤田嗣治-美術史のメインストリームとともに検証しなければ大友作品の特質は見えてこないのである」と言い切る。肯ける。
新作短編アニメ「火要鎮」が来年公開される。 舞台は江戸。商家の娘お若と幼馴染の松吉。惹かれあう二人であったが、松吉は家を勘当され町火消しとして生きる。そんな最中、お若の縁談の話が進み始めた。松吉への思いを忘れられない彼女の狂った情念は、大火事を引き起こし江戸の町を焼き尽くす。その大火の中で再びめぐり合う二人。巨大都市江戸の大火を舞台としたスペクタクル、とのこと。劇場ではアニメのオムニバスの一本とのことだけど、絶対観に行く。
もう一つのイベント、大友克洋GENGA展が3331Arts Chiyodaで5月30日まで開催中とのことだ。5月のNHK「日曜美術館」では大友を取り上げるのであろうか。興味津々である。
ところで、アトリエ拝見のページをじっくり眺めていたら、本棚の下段に「芸術新潮」のバックナンバーがきっちりと収まっているのを発見。雑誌名だけを密かにカットに収めている。編集者とカメラマンはしてやったりであろう。
—おまけ—おまけ—おまけ—はなげ—おまけ—
山口晃の代表的な作品を収録した一冊。「ルーペ付のしおり」が付属するという細密さ。当世おばか合戦図屏風などは1ページを30分以上かけて楽しむことができるため、2800円はお買い得。
椹木野衣は1992年にレントゲン藝術研究所で展覧会『アノーマリー』を企画、村上隆やヤノベケンジを美術界の新しい波として紹介した。「芸術新潮2012年5月号」はその村上隆特集。特集のタイトルは「まだ村上隆が、お嫌いですか?」である。