本書を「ちょい読み」で紹介するには気が引けるのだが、まだ丸ごと一冊読み終わっていないので、年末年始用に速報しておきたい。本書は今年最後のおススメ本になるかもしれない。それも飛び切りのおススメ本なのだ。山内・横井・宮本・荒川など魅力的な登場人物、それぞれのゲームタイトルとゲーム機のビジネス・ディテール、セレンディピティと戦略。素晴らしいビジネスケース・スタディに仕上がっている。MBAの授業で丸ごと使えそうだ。
いっぽうで本書は小説として読むこともできる。それもゲームの主人公が空を飛ぶようなスピード感で物語が進行するのだ。全24章の最後の数行を読むだけでもお判りになるであろう。
第2章の最後「もし山内が経験を積んだデザイナーにROM交換プロジェクトをやらせていたら、もし横井が宮本に好き放題にデザインさせていなかったら、もし宮本がストーリーを語るのではなく、単にゲーム作ろうとしたらーマリオがこんな風に生まれることは絶対になかった」そうだったのか!
第10章の最後「任天堂はライバル会社が少々マーケットシェアを増やしたぐらいでは動じなかった。さらに、準備中の次のマリオゲームがセガの野望を打ち砕くことになる」戦略なのか?
第13章の最後「しかしその転換の1つが、任天堂にとって最大のライバルを生み出すきっかけになる―そしてそのライバルに任天堂を屈服させる技術をもたらすことになろうとは―この時の任天堂は知る由もなかった」わくわく!
第21章の最後「PSPは、今なお毎年ソニーに多くの収入をもたらしてくれる正統のゲーム機だ。だがそれは、流刑地のエルバ島で捲土重来の機会をうかがうナポレオンのようでもあった」ソニーはどうなるのだろう?
翻訳も素晴らしい。本書はビジネスケースとしても小説としても読むことができる。ビジネスマン、とりわけエンターテイメント関係者にとって冬休みの必読書かもしれない。