もしあなたがTEDのステージに呼ばれたとしても、この本を読んでおけば大丈夫!あなたはサー・ケン・ロビンソンのような素晴らしいプレゼンをこなすことができるでしょう。えっ?TEDのステージに立つ機会なんて私にはないって?いやいや、そんなことはわかりませんよ。TEDのステージでプレゼンをする人には2種類のタイプがいるのですから。
第1のタイプは偉業を果たした人達、あるいは並外れた才能に恵まれた人たち。きっとあなたがイメージするTEDのプレゼンターというのはこちらのタイプの人だと思います。では第2のタイプはどうでしょう?第2のタイプは自分の身に起こった驚きのストーリーを語ってくれる人たちです。そう、あなたや私と同じように、どこにでもいる人たちなのです。
自分の身に起こった驚きのストーリーなんて持ってない?そんなことはないでしょう。大人になっているからには、恋愛や失恋のひとつやふたつは経験していると思いますし、人を傷つけたこと、誰かに傷つけられたこと、仕事で苦難を乗り越えたことなど、所々で普通ではない瞬間が訪れているはずです。そんな瞬間を切り取ったあなたのストーリーが、誰かにインスピレーションを与えるかもしれません。だからいつ呼ばれてもいいように、準備はしておくに越したことはないのです。
たとえTEDのステージに呼ばれないとしても、人前で話す機会がないという人はほとんどいないはず。だからこの本はすべての人にとって、有用な本になるはずです。会社でのプレゼンはもちろんのこと、ちょっとしたスピーチや、巷で話題のビブリオバトルなどでも使えるでしょう。またTEDではなくとも、講演を頼まれることだってあるはず。実際、こんな私にも、講演の依頼がきたことがあるのですから……。そのときは話せることなんてないとお断りしましたが、この本さえ読んでいれば、依頼を受けることができたかもしれません。とにかく人前で話すときに使える具体的なテクニックが満載の1冊。これを読まない手はありません。
知らない人のためにTEDについて紹介をしておきます。TEDとはテクノロジー、エンターテイメント、デザインの3つの分野から感動と衝撃をもたらすアイデアを紹介し、広めていくことを目的としたNPOです。インターネットでのプレゼンの配信が有名ですよね。著名な人たちのプレゼンをみることができるので、ついつい時間を忘れて見入ってしまいます。
百聞は一見にしかずなので、レビューの冒頭で名前をあげたサー・ケン・ロビンソンのプレゼンをみてください。サー・ケン・ロビンソンの動画はTEDで一番視聴されているプレゼンのひとつです。「学校教育は子供の創造性を殺してしまっている」というテーマのプレゼンなのですが、冒頭からユーモアたっぷりで、20分弱の動画なのに、あっという間に終わってしまう印象です。
http://www.ted.com/talks/lang/ja/ken_robinson_says_schools_kill_creativity.html
TEDのプレゼンターには運営側から「TEDの十戎」なるガイドラインを示されるそうです。この本の著者が内容と伝え方の2つのカテゴリーに分けて紹介しているので引いてみます。
内容
・オハコの披露にとどまる事なかれ。
・大きな夢を語れ。あるいは人々の驚きを誘う新しい何かを示せ。もしくは、初めて明かす話をしろ。
・ストーリーを語れ
・闇に葬られたくなければ、ステージ上での売り込みはやめるべし。会社や商品、著作の宣伝をするなかれ。資金提供も請うてはならない。
・「笑いは宝」と心得よ。
伝え方
・ 好奇心と情熱を惜しみなく示せ。
・ 良き関係づくりと最高の議論を目的として、他の話し手の発言には自由に意見を述べるべし。
・ 自慢話に終始するべからず。己の弱みを隠すなかれ。成功とともに失敗を語れ。
・ 原稿を読むべからず。
・ 次の話し手の時間を奪ってはならぬ。
この十戎を知るだけでも、この本を買う意義は大きいでしょう。ここに書かれていることを意識するだけで、プレゼンの質は確実に向上します。でもこの本に出ているテクニックはこんなものじゃありません。話し方から、プレゼンの構成、ユーモアの散りばめ方、ボディランゲージに至るまで、有効な方法がこれでもか!と具体的に書かれています。しかもそれが全体を通してさらっと読めるのが素晴らしいところです。
と、ここまでレビューを読んできたあなたは、その具体的なテクニックが一つも紹介されていないじゃない!と憤っているかもしれませんね。はい。実はわざと書いてないのです。だってここで教えたら、もったいないんですもの。なので、具体的なテクニックを知りたい人はぜひともこの本を手にとって読んでみてください。笑
サクッと読めてものすごく使えるすばらしい本。2013年のベスト翻訳ビジネス書はこの本で決まり。みなさん、これは買いですよ!買い!
プレゼンといえばやはり、スティーブ・ジョブズのことを忘れてはいけません。TEDでは彼のスタンフォードでのスピーチをみることができます。この本はジョブズ流のプレゼンを学ぶことができます。
本著の中にも名前が出てくるガー・レイノルズのプレゼン本。プレゼンの定番書と読んでも差し支えないでしょう。『TEDトーク』ではスライドを使わないほうがいいと言っていますが、スライドを使う際には彼の手法が参考になるはずです。
『TEDトーク』とともに、この本を併読すると、より効果的なプレゼンが出来るような気がします。(HONZでの私のレビューはこちら)