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こんにちは。栗下直也です。HONZメルマガは栗下→栗下→新井のローテーションなのですが、たまに当日の午後まで自分が当番であることを忘れています。本日も14時前に事務局の仲尾夏樹から「今日、大丈夫ですか?」と連絡があり、あまり大丈夫じゃないですと返すわけにもいかず、書き始めた次第でございます。
世間は日大タックル問題をいまだにひきずっており、まるで悪の帝国が崩壊していくかのような叩かれっぷりです。そこまで叩かなくてもなどと考えながら、ネットで古本を漁っていたら、『暗黒の日大王国』、『壊れる大学 ドキュメント日本大学国際関係学部』と絶妙なタイトルの本が見つかり、何とも言えない気分に。後者はまだ手に入れやすい状況なので買ってみたら、気が滅入ることこの上なく、ここで紹介するのは、はばかられる状況なのです。メルマガの存在を先ほどまですっかり忘れていたため、紹介するのが面倒になったワケでは決してありません。そもそも本を今日は持ち合わせていません。ごめんなさい。
さて、今号は久々に編集者の自腹ワンコイン広告があります。我ながら少し強引な展開ですがが、記事から、少し引用してみましょう。
”今後必要とされるのは「中心」からは程遠く、想像力たくましく生きてきた「辺境」の知恵ではないか? 虎視眈々と「中心」の動きを見ながら、斜め上をゆく新たな変革の芽を育てていたのは、いつの時代も辺境だったのではないか? さらには、世界的な行き詰まりを突破する方途は、複数の「辺境」の知恵をつなぎ合わせてまだ見ぬ星座を形作ることにあるのではないか?”
何とも読みたくなりますね。気になる方は是非、メルマガ最後に掲載されている全文をご覧下さい。
今週もメルマガスタートです。
日大タックル問題が米国では起こりえない、指導者が間違っても起こそうと思わないことが本書を読むとわかる。厳罰が処せられるため、あまりにもリスクが大きいからである。では、なぜ厳罰が処せられるか。一言で言えば、大学スポーツがビジネスとして成立して… more
栗下 直也 |
インド・ヨーロッパ語族の拡散は大航海時代以降に加速している。だがじつは、すでに紀元前400年の時点でも、その語族はアジアやヨーロッパの広い地域に分布していた。ならば、インド・ヨーロッパ語族はどうしてそれほど広い地域にいち早く拡散したのだろう… more
澤畑 塁 |
つきあいは四半世紀以上に及ぶが、その永野さんが2冊目の著書『経営者』を上梓した。 最初に知り合ったニューヨークの時代から、永野さんは、起こっていることの意味づけを考えるのが得意だったが、この本でも理論家として永野健二は冴えに冴えている。 more
下山 進 |
歴史というものは、常に勝者が作ってきたものである。勝てば官軍負ければ賊軍という言葉にある通り、戦いに勝った側が自身の正当性を主張するために、負けた側を貶めることがよくある。現在、日本で教えられている歴史も例外ではないのだろう。一般的には討幕… more
田中 大輔 |
「伝説の記者」と呼ばれていた著者は四半世紀にわたり永野塾という早朝勉強会を主宰していた。参加者の多くは若い記者や編集者たちだった。のちに高名なジャーナリスト、敏腕の編集長、大学教授などを輩出することになるその勉強会では、もっぱら主宰者である… more
成毛 眞 |
勝間和代さんが現在同性のパートナーと暮らしていることを「カミングアウト」した。異性カップルであれば、ここまで「勇気をもって公表する」必要はなかっただろう。 セクシュアルマイノリティが、「そのままの自分」を他者に伝えるとき、どんな障壁があり… more
アーヤ藍 |
今回解説のオファーを頂き、新たな心持ちで再読したら、また新たな発見があった。それは、本書はもう二度と起こっては、起こしてはならない、痛ましすぎる少年犯罪についての、傑作ルポルタージュであると同時に、およそ人の生死に関わるような事件など起こる… more
新潮文庫 |
『10年後の仕事図鑑』(落合陽一・堀江貴文)が売れています。『未来の年表』の大ブレイクなど、未来のために今やるべきことを語る本は出版点数も増えており、いま最も注目を集めるジャンルとなっています。新たな知識や技術が次々と発表されてくることから… more
古幡 瑞穂 |
けったいなおっさんである。大阪駅から環状線で一駅目の福島駅近くにある、知る人ぞ知るフレンチレストラン『ミチノ・ル・トゥールビヨン』のオーナーシェフだ。つむじ風を意味する店名トゥールビヨンに込められているように、旋風をおこしたいと常にたくらん… more
仲野 徹 |
ツイードジャケットは英国製よりもイタリア製のほうが好きだ。柔らかく、シワになりやすいが、肌に馴染んで、なによりも色合いが美しい。本書はそのイタリアの織物のように軽やかで、味わい深く、時には風を通すような美しい本だ。紙質、装丁など、どこを見て… more
成毛 眞 |
いざ当たり前に知っているだろうと思っていることを質問されたときに、言葉にする前は自信があったのに、いざ言葉にしようとすると答えに窮するという経験は誰にでもあるだろう。これは知識の錯覚-実際にはわずかな理解しか持ち合わせていないのに物事の仕組… more
山本 尚毅 |
彼は核融合炉を作り上げるだけで止まらずに、そこで得た知見と技術を元に兵器を探知するための中性子を利用した(兵器用核分裂物資がコンテナなどの中に入っていると、中性子がその物質の核分裂反応を誘発しガンマ線が出るので、検出できる)、兵器探知装置を… more
冬木 糸一 |
東芝だけでなく、神戸製鋼、三菱マテリアルなど、日本の大企業の不祥事が相次いでいる。しかし、これらを個別の企業の経営管理の問題と捉えては何も見えてこない。渋沢資本主義を日本の歴史のなかに位置付けてこそ、見えて来るものがあるのではないか。それは… more
新潮社 |
出口さんの『西遊記』の授業は、まず、古典を読むことの意義を解くことから始まる。というとちょっと語弊があるかもしれない。出口さん曰く「読書から教訓を得るべきなどという考えは捨てなさい」というところから始まるのだ。読書の“意義”などということ自… more
麻木 久仁子 |
中国返還から20年がすぎ、「中国化」(大陸化)がじんわり進む中で、かつてのイギリス植民地下で育まれた自由の気風が減じている香港。しかし2014年の民主化デモ・雨傘運動以降、足もとでは新たな変化も起きています。一方、2011年の東日本大震災を経てオリンピックを控える東京には、どこか表層的な雰囲気が漂い、政治と社会の底ぬけが感じられるのではないでしょうか。
そうはいってもしかし、トランプ大統領の誕生以後、「中心」が抜け落ちてしまった世界で、今後必要とされるのは「中心」からは程遠く、想像力たくましく生きてきた「辺境」の知恵ではないか? 虎視眈々と「中心」の動きを見ながら、斜め上をゆく新たな変革の芽を育てていたのは、いつの時代も辺境だったのではないか? さらには、世界的な行き詰まりを突破する方途は、複数の「辺境」の知恵をつなぎ合わせてまだ見ぬ星座を形作ることにあるのではないか?
中国とアメリカという大国のはざまにありながらも、もはや「このようにありたい」「こうあるべき」という確固たるモデルを失い、どこかディストピア的、そして虚無的な領域に足を踏み入れつつある日本と香港。2つの「辺境」の足もとから、時空を超えて次なる辺境へ想像力のバトンをつないでゆこうとする1年にわたる往復書簡は、トランプ大統領誕生以後の世界の変化を、足もとから真摯に見つめた記録です。
著者は、中国文学が専門ながら、東洋と西洋の思想を自由自在に越境する博覧強記の文芸評論家・福嶋亮大さんと、日本語に堪能でサブカルからアカデミックなシーンまで日本文化を心から愛する香港人社会学者・チョウイクマンさん。
雨傘運動を機に頻繁にやりとりを交わすようになった雑種的知性の持ち主ふたりは、情と理、それぞれタイプは異なりながらも、時空を超えてその対話を深めてゆきます。国民国家の枠組みにはもとからなかった自由都市香港は、中国の脅威がますなか、どんな変化にさらされているのか。
チョウさんの時に詩情あふれる現場報告は香港からマンチェスター、ボストン、再び香港へと移動を重ねますが、異国の地にあっても「辺境・辺縁」への視点に絶えず縁どられ、刻々と変化する香港情勢が文のなかに色濃くにじみます。
対する福嶋さんは、東京から日本の辺境たる東北、さらには九州へ、はたまた中東や東欧にもその想像力をとばし、時空を超えた「辺境」に思いをはせながら、立体的な応答を重ねます。
大局的に見ればネガティブな時代の転機に思われるかもしれませんが、過去を発掘することでいかようにでもヒントを見出すことができる、という心強い思想にも貫かれた本書は、いってみれば日本と香港という合わせ鏡のような存在から出発して、まだ見ぬ地図を描きだそうとする探究的試みなのです。
さらには、国民国家の枠組みがゆらぎ、自由と民主が不確かに思われるいま、求めるべきは垂直方向にある「父」的なモデルではなく、都市と都市をつなぐ水平方向の兄弟的なモデルにある、という見立てが、この往復書簡のひとつの核となるでしょう。都市と都市、都市のエートスを丁寧につなぎ直そうとする試みは、都市に身体性を発見して、その文脈を浮き上がらせようとする創造だといってもいいかもしれません。
鳥の目虫の目的な往還によって、問い不在の現在を問うてゆく二人が見つめるのは、内田樹さんのベストセラー『日本辺境論』に抜け落ちた視座を補ってアップデートしようとする野心的試みともいえそうですし、何よりも、心と文化をめぐる熱き対話です。混迷を深める世界を切り開く雑種的想像力に富んだ未来への書を、ぜひひも解いてみてください。
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