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こんにちは。栗下直也です。今週は、もはやHONZメンバーも忘れかけていた「編集者のワンコイン広告」が久々に登場します。お待たせ致しました。お待たせし過ぎたかもしれません。りんご好きが泣いて喜ぶ一冊を編集者が太っ腹なことに自腹で紹介してくれます。
さて、2016年も残り2カ月を切りました。いろいろな本を読みましたが、私が今年一番元気が出た本といえば、『全裸監督 村西とおる伝』。あの80年代に栄華を極めたAV監督、村西とおるの評伝です。
前科7犯、借金50億円、米国司法当局から懲役370年求刑。くじけない、めげない、とにかく喋ります。闇社会に金を返せず、ダムに連れて行かれても、とにかく喋り倒して、難を逃れます。
今年は「ホラッチョ」と呼ばれ、経歴詐称で姿を消したハーフ顔のイケメンキャスターがいましたが、ホラしかふいてないのになぜか説得力がある村西マジック。「ナイスですね」、「お待たせ致しました。お待たせし過ぎたのかもしれません」の名台詞。確かに、待ちに待っていたよ、この一冊。
何度、こけても不死鳥のようによみがえる生命力の強さ。日本に足りないのは村西とおる的精神なのかもしれません。失われた10年は村西とおるを失っていた10年だったと再認識します。持ち上げすぎか。とはいえ、書店で冒頭の3頁読めば、絶対に買いたくなる一冊です。
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突然ですが、りんごの種類、いくつ言えますか?
ぶどうなら、巨峰・デラウェア・シャインマスカット……3つくらいすぐ出てきて見分けもつくのに、りんごとなると、黄色いのは王林、赤いのはふじ、つがる……名前は知っているけれど、区別がつかない。たいていの人は(青森や長野出身の人はのぞいて)そんな感じではないでしょうか。
りんごはスーパーでほぼ1年中手に入るし、「わーい、メロン!」「いちご、大粒だ~」的な高揚感には欠けますね。嫌いって人は少なさそうだけど、好きな果物NO.1にりんごを挙げる人も少なそう。体にいいと言われているから、冬の間はよく食べる、そんな人も多いのではないでしょうか。
小説家・谷村志穂さん、実は北海道大学農学部出身のリケジョです。谷村さんが半年間ほぼ毎日りんごを食べ比べ(ききりんご)をして、驚きや気づきを綴ったのが『ききりんご紀行』です。
現在国内で流通しているりんごは約40種類。谷村さんが食べたのは、そのうち30種類以上! 紅の夢、スイートメロディ、涼香の季節……なんて珍しい名前のりんごも含まれます。食べながらどんどんハマっていき、「ふじでも、作り手によって味がまったく違う」「りんごの密はストレスでできる」など、どんどん深堀りしていく一冊です。
この本が誕生するきっかけは、1年前にさかのぼります。10月上旬、打合せで谷村家へ伺うと、コーヒーと一緒に谷村さん手作りの、あつあつアップルパイが。
「毎年、紅玉の季節に作るんです、よかったらどうぞ」
担当編集の私は青森出身ですが、りんごは食べるなら生、アップルパイやジャムなど加工品は邪道だと思っていたので、正直に言いました。
「私、煮たりんご苦手なんです」
「え~、なんで?」
あの瞬間、谷村さんの探究心に火がついたのだと思います。あれから1年、取材を続け、この本が完成したという訳です。谷村さんと一緒に、私も半年間毎日りんごを食べました。いざ食べはじめたら、毎日でも飽きるどころか、どんどん好きになっていく。お通じも順調。今では、煮たりんごやジャムも大歓迎だし、新しいアップルパイの店ができたと聞くと買いに行くほどの変わりようです。去年まで、りんごは実家から送ってもらうので充分だったのに、今では全然足りず、通販でおとりよせしています。
何種類かのりんごを食べて、どれがどれかを言い当てる、“きき酒”ならぬ、“ききりんご”。りんごの旬(何月頃にどの品種が出回るか)をおさえておけば、ある程度は可能かと思います。たとえば、10月に酸味の少ないりんごが出されたら「トキだな」とか。
また、トキの親品種は「ふじ×王林」なんてふうに、りんごのお父さん・お母さん品種を調べてみると、自分好みのりんごをはずさず探せますよ。実際、居酒屋の“きき酒セット”みたいに、りんご何種類かを少量ずつ詰め合わせて送ってくれる通販サイトも増えてきています。冬になると蜜入りサンふじが売場の大半を占めますが、谷村さんのおすすめは「冬恋」。黄色い新種りんごで、びっくりするほど甘いです。
りんご王国・青森人もびっくり情報満載の、マニアックでハッピーな『ききりんご紀行』、ぜひのぞいてみてください!
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