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こんにちは。栗下直也です。熱心なHONZ読者はご存知かもしれませんが、25日に中央公論新社から『ノンフィクションはこれを読め!2014 HONZが選んだ100冊』が発売されました。副代表の東えりかによれば「2013年7月~2014年6月までにサイト上に紹介した新刊ノンフィクションの中から100冊を厳選。著者インタビューや対談も加えた、HONZの魅力満載の1冊に仕上がっております」とのことです。
一昨年、昨年に続き3冊目となる『ノンこれ』ですが、レビュアーとしても嬉しいものです。私も発売日に書店に並ぶ『ノンこれ』を一目見ようとパトロールに出かけたのですが、そこでトンでもない本を見つけてしまいました。それも同じ中央公論新社さんから同日に出された本です。
『酒場詩人の流儀』(吉田類、中公新書)
月曜9時にBSーTBSで放映中の大人気テレビ番組「吉田類の酒場放浪記」でおなじみ吉田類さんの新書です。月9(ゲック)といえばフジテレビでなくBS-TBSとまで言わしめたあの吉田類さんです。週刊誌が「吉田類、実は下戸?」と報道したときには新橋界隈を沈黙させた、あの吉田類さんです。SMバーどころの騒ぎではありません。
もはや吉田類さんを知らない人には何を書いてあるのか、全く理解できない流れになっていますが、あの吉田類さんと中公新書という予想外の組み合わせはなんなのでしょうか。麻木久仁子が新橋の立ち飲みやでホッピー飲んでいるくらい違和感があります。
肝心の内容ですが、タイトルからして、酒にまつわるエッセイ集かと誰もが想像すると思います。「はじめに」には「僕の旅に欠かせないアイテムは酒と俳句だ」、「酒豪の酒場詩人と呼ばれるうちが花かもしれませんな・・・。」などの言葉が並びます。いやでも期待が高まります。
4部構成で1章の章題が「酒徒の遊行」。もはや鉄板です。外れのワケがありません。そのままレジにもっていこうと思いましたが、時間もありましたし、目次を眺め、「心が通う瞬間」という一編のエッセイを選び頁をめくってみました。酒場での人と人の心が通う瞬間を吉田類視点で描かれてることは間違いありません。感動、間違いありません。と思いきや、書き出しで、思わす腰を抜かしてしまいました。
「昆虫と会話ができるんですってね」。時折、こんなジョークめいた問いかけをされることがある。
吉田類さん、どうしたんでしょうか。いきなり、ぶったまげましたが、「なるほど、ここから、酒場に話が展開されるのか。すげー、類さんの文章力と発想!昆虫とはやられたよ。ははは」と感心していたら、オール昆虫話でその一編は終わってしまいました。最後には「蟻はこぶ 中年男を 布団ごと」と一句詠んでいるし。呆然としながら、目に入った隣の頁に載っていた次のエッセイの題が「ファーブルの丘便り」。
「どんだけ虫好きなんだよ。俺はHONZの虫担当じゃない!」と思いながらも、これは何かの間違いだと諦めきれずに読み進めていると、イワナやらアイヌの話に混じりながらお酒にまつわるエッセイが少しずつ酔いがまわったかのように増えていきます。その様は、まるで、吉田類さんが「酒場放浪記」でだんだん目が怪しくなりながら、隣のテーブルに乱入してツマミをお裾分けしてもらう姿と重なるではありませんか。ちょっと無理がある例えですが、徐々に盛り上がる構成は圧巻です。虫の話は影を潜め、なんだか感心ではなく安心してしまい、買ってしまった次第でございます。
って、完全に吉田類さんの『酒場詩人の流儀』の話になりましたが、『ノンフィクションはこれを読め!2014 HONZが選んだ100冊』を皆様、宜しくお願いします。ではでは。
これを受け、ソーシャルアカウントの運用を一部変更することにいたしました。これまでHONZのTwitter/Facebookページ/RSSにて「HONZ/マンガHONZ」の全記事を配信。マンガHONZのTwitter/Facebookページについてはテスト運用としての扱いになっておりましたが、今後HONZ/マンガHONZのアカウントを完全に切り分けて、それぞれコンテンツを配信して参ります。 more
内藤 順 |
いよいよ明日、10月25日(予定)に『ノンフィクションはこれを読め!2014 HONZが選んだ100冊』が発売されます。早いお店では、今日から店頭に並んでいるかもしれません。今年のテーマカラーは青!さわやかな帯が目印です。 本書では、2013年7月〜2014年6月までにサイト上で紹介した新刊ノンフィクションの中から100冊を厳選。著者インタビューや対談も加えた、HONZの魅力満載の1冊に仕上がっております。 more
東 えりか |
本書は、『第二の地球』を探し、宇宙に生命を求める研究の最前線が紹介されている本である。ほんの20年ほど前には、木星のような大きな惑星ですら太陽系外では発見されていなかった。太陽以外の恒星のまわりを周回する惑星が初めて実際に観測されたのは19… more
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シンプルでセンス溢れる軽快な装丁、帯には江國香織と穂村弘の推薦文、著者は、僕らの世代だと、ハワイやサーフィンのイメージがすぐに浮かぶ、作家・翻訳家の片岡義男と、クッツェーの翻訳や『嵐が丘』の新訳で知られる鴻巣友季子。そしてタイトルの「蒟蒻問… more
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「神社ガール」って言葉までできたほど、神社が女子に人気になっている。縁結びで有名な出雲大社など、ご利益を求めた女子でいつでもごった返しているほど。そんな「神社ガール」にもっと神社を楽しんでもらいたくて作ったのがこの本。
そもそものきっかけは2年前に一緒に伊勢神宮125社をまわる本をつくったこと。昔は「伊勢神宮より伊勢丹が好き」だったという松尾さんの初イラストエッ セイが何の因果か神社本。そのあと、今度は出雲の神社めぐりの本を出版。伊勢と出雲という日本の二大聖地の本を出したおかげで、松尾さんは図らずも「神社 ソムリエ」のような存在に。そして、そんな神社ソムリエが伊勢、出雲と神社めぐりの本を出して、次のテーマに選んだのが「古事記とその神様」だった。
神社をまわるうちに、そこに祀られている神様に興味をもち、神様が描かれている『古事記』を読んでそのぶっとんだ世界観にシンパシーを感じ、これを伝えたいと思った松尾さん。「日本の神話はこんなに面白い、それを知れば神社めぐりはもっと面白くなる」、そう感じたとか。
『古事記』に登場する神様はどれも人間的で愛らしい。それをどう伝えるか……。選んだ方法が「ゆる神様」だった。これまでの自分の画風をガラッと変えた、漫画風キャラクターの3頭身神様。なかには人の姿をしていない神様までいる破天荒ぶり。
これまでキャラクターはあまり描いてこなかった松尾さんにとって、合計114も の神様を描き分けるのは大変な作業だったらしい。それぞれの神様のエピソードを注意深く読み込んで、何度も描き直した末に完成した神様たち。愛情がたっぷ り詰まった可愛らしい神様のイラストは見てるだけでも癒されるはず。
キャラクター紹介の文章も簡潔で、家族構成、祀られている神社、ご利益もしっかり明記。『古事記』を読んだことのない人のために名場面も漫画にして紹介した。『古事記』の入門書としてぴったりの1冊。
想定していなかったのだが、このイラスト、子供に評判がいい。イギリスの歴史学者アーノルド・J・トインビーは「12、13歳までに民俗の神話を学ばなかった民族は必ず滅びる」といっているそうだ。この本が子供の神話教育の一助になれば、こんな嬉しいことはない。
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